中小企業の越境EC|小さな会社こそ世界で戦えると考える理由

「越境ECは、体力のある大手企業がやることだ」。そう感じたことはないでしょうか。海外に商品を送る、言葉の壁がある、法制度もよく分からない。考えるほどに、ハードルは高く見えてきます。

私たちラクフルは、社員33名(パートを含む)の会社です。国内ECリユース・アパレルを軸に複数の事業を運営してきましたが、けっして大きな会社ではありません。それでも私たちは、越境ECの本格化を計画として掲げています。大手だから挑めるのではなく、むしろ小さな会社にこそ、世界で戦える理由があると考えているからです。

この記事では、その考えの中身を正直にお伝えします。越境EC市場の現状データ、中小企業ならではの構造的な強み、そして完璧な準備を待たずに動き出すという私たちの向き合い方です。すでに海外展開を検討している経営者の方にも、まだ迷っている段階の方にも、判断の材料にしていただければと思います。

この記事で分かること

  • 越境EC市場は今どれくらいの規模で、どんな伸び方をしているか
  • 越境ECを始める前に押さえておきたい基礎知識と、つまずきやすいポイント
  • 中小企業だからこそ持てる、大手にはない構造的な強み
  • 完璧な準備より先に動き出すという、私たちなりの現実的な考え方
  • ラクフルが今、越境ECにどう向き合っているかという等身大の現在地

「越境ECは、大手企業のものだ」という思い込みについて

越境ECと聞くと、多くの人が大手企業の名前を思い浮かべます。潤沢な予算、海外拠点、専門部署。たしかに、そうした体制があれば有利な場面は多いでしょう。

ですが私たちは、その前提そのものに疑問を持っています。越境ECは規模の勝負ではありません。ニッチな商材を扱えること、意思決定が速いこと、そして顧客の顔が見える距離感で商売できること。これらはむしろ、社員数の少ない会社のほうが持ちやすい強みです。完璧な準備が整うのを待つより、小さく学びながら進む姿勢そのものが、中小企業にとっての資産になる。これが、私たちの結論です。

もちろん、根拠のない精神論だけで語りたいわけではありません。まずは市場の現状から、順を追ってお話しします。

越境EC市場は今、どれくらいの規模なのか

越境EC(えっきょうEC。国境を越えてインターネット上で商品を売買する取引のこと)は、けっして小さな市場ではありません。

経済産業省が2025年8月に公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年に中国の消費者が日本の事業者から購入した越境EC額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)でした。米国の消費者が日本の事業者から購入した額は1兆5,978億円です。米国側については、日本経由分だけを取り出した伸び率の公式な記載が同調査には見当たらず、確認できているのは米国の消費者による購入総額(日本・中国からの合計)としての7.3%増のみです。数字の粒度に差はありますが、日本製品への海外需要が年々積み上がっている実態は、どちらの数字からも見て取れます。

この数字の大部分は、大手モールや大手メーカーが占めているのも事実です。ただし、越境ECの購買行動は「有名ブランドだから買う」だけではありません。国内では当たり前すぎて見過ごされている日本製の日用品や、特定のジャンルに深く刺さるニッチな商品ほど、海外の一部の熱心な顧客に強く求められる傾向があります。市場全体が伸びているということは、大手が埋めきれていない隙間もまた、広がり続けているということです。

越境ECの基礎:何から始まり、何が壁になるのか

越境ECの検討を始めると、必ずいくつかの壁にぶつかります。ここで、基礎的な用語と、つまずきやすいポイントを整理しておきます。

まず、越境ECには大きく分けて3つの形があります。①自社サイトを多言語化して直接販売する方法、②海外の大手モール(Amazon・eBay・Shopeeなど)に出店する方法、③代理購入や転送サービスを介して間接的に届く方法です。それぞれ必要な体制も費用感も異なり、この選択自体が最初の壁になります。

次に立ちはだかるのが、言語・物流・関税・決済という4つの実務です。商品ページの翻訳には、直訳ではなく現地の感覚に合わせて言い回しや単位を整える「ローカライズ」という考え方が必要です。加えて、海外への発送手段の選定、関税や通関の手続き、海外通貨での決済対応も欠かせません。どれも国内EC運営とは異なる知識が要り、「何から手をつければいいか分からない」という声を、私たちも同業者からよく耳にします。

さらに、中小企業ならではの壁として、専任担当者を置く余裕がない、英語をはじめとする語学対応に不安がある、といった人的リソースの問題もあります。これらの壁は事実として存在します。だからこそ、次章でお話しする「中小企業の強み」の側から、壁の乗り越え方を考える必要があるのです。

小さな会社にこそ、構造的な強みがある

私たちは、中小企業には大手にはない構造的な強みがあると考えています。教科書的な一般論で終わらせないよう、私たち自身の現場の話も交えてお伝えします。

まず、ニッチな商材に向き合える強みです。大手企業は、一定以上の売上規模が見込める商材でなければ扱う理由がありません。一方、私たちは複数のモールでリユース品や一点ものの商材を扱い、そもそも規模の大きさではなく「価値をわかってくれる誰か」に届けることを前提に商売をしてきました。この検品・状態表示の実務は、海外の熱心な顧客にもそのまま通用する資産になるはずです。ニッチであることは弱みではなく、越境ECにおいてはむしろ狙いを定めやすい強みになります。

次に、意思決定の速さです。大手企業では、海外展開ひとつをとっても稟議や部門間調整に時間がかかります。私たちのような33名の会社では、試してみる、うまくいかなければ変える、という判断のサイクルを短く回せます。完璧な戦略書を作ってから動くのではなく、小さく出してみて、反応を見ながら整えていく。この身軽さは、越境ECのように「やってみないと分からないこと」が多い領域で、実は大きな武器になります。

最後に、顧客との距離の近さです。大手企業のカスタマー対応はどうしても仕組み化・分業化されますが、私たちの規模であれば、国内のお客様から届いた一件の問い合わせやレビューに、現場の担当者が直接向き合ってきました。声を聞き、次の商品ページや梱包に反映する。この国内で積み重ねてきたフィードバックの速さを、越境ECでも同じように活かせるはずだと私たちは考えています。

ニッチな商材、速い意思決定、顧客との距離。この3つが噛み合う先に、大手が入りにくい隙間で確かな存在感を持てる中小企業の姿があると、私たちは見ています。

完璧な準備より、小さく学びながら進むという考え方

とはいえ、強みがあるからといって、何の準備もせずに飛び込んでよいわけではありません。私たちが大切にしたいのは、「完璧な準備を待たない」ことと「無計画に動く」ことの違いです。

現実的な始め方として、まず頼れるのが公的な支援制度です。日本貿易振興機構(JETRO)は「新規輸出1万者支援プログラム」や「越境EC支援事業パートナー制度」を通じて、初めて海外販売に挑む事業者を後押ししています。中小企業が単独で全てを抱え込む必要はありません。

その上で私たちが意識したいのは、最初の一歩を小さく、期間を区切って設計することです。目安として、最初の90日を3つの段階に分けて考えています。最初の30日は、1つの商材・1つの市場を決め、価格と物流の設計を固める準備期間です。次の30日は、実際に出品してテスト販売を行い、問い合わせや反応を記録する期間です。最後の30日は、売れた・売れなかったの結果だけでなく問い合わせの内容や海外の顧客の反応そのものを学びとして棚卸しし、次の商材・市場へ広げるかどうかを判断する期間です。全カテゴリ・全地域に一気に広げるのではなく、この「小さく試して、90日で学びを棚卸しする」進め方こそ、意思決定の速い中小企業が最も活かせるやり方だと考えています。

私たちが今、越境ECにどう向き合っているか

正直にお伝えすると、私たちの越境ECは、まだ本格稼働の実績を語れる段階ではありません。国内ECリユース・アパレル・KIDSpo・レンタルスペース・とよなかマルシェ・製品開発OEM(TABI Sneakers)・WEB制作という6事業を、豊中の拠点から並行して運営してきた私たちにとって、越境ECは「これから本気で取り組む」計画です。

それでも、この記事に書いたことは机上の空論ではありません。国内で複数モールを横断して運営してきた経験、一点もののリユース品を扱ってきた検品・状態表示の実務、33名という規模だからこそ保てている現場の距離感。これらはすべて、越境ECに転用できる資産だと私たちは考えています。私たちが直面しているリアルな壁については、姉妹編の豊中から世界へ|私たちが越境ECに本気で取り組む理由でも詳しくお話ししています。会社としての計画の全体像は今後の展開のページにもまとめています。越境ECの制度面の詳細(関税・通関・配送手段の比較など)は、今後の記事で詳しく解説する予定です。

私たちがこの挑戦を続けるのは、地域の中小企業にも同じ問いを持ってほしいと願っているからでもあります。地域企業がインターネットを通じて全国・世界とつながる可能性については、地域企業がインターネットで全国・世界とつながるための条件でも取り上げています。豊中という小さなまちから始まった会社が、世界を視野に入れる。それ自体が、同じ立場の経営者への、ひとつのメッセージになればと思っています。この挑戦を一緒に前に進めてくれる仲間は採用ページで、越境展開に関するご相談はお問い合わせで、いつでもお待ちしています。

まとめ:世界は、大きな会社だけのものではない

越境ECは、資本力のある大手企業の専売特許ではありません。市場は年々拡大を続けており、その中には大手が埋めきれていない隙間が確かに存在します。中小企業には、ニッチな商材への向き合い方、速い意思決定、顧客との距離の近さという構造的な強みがあります。

大切なのは、完璧な準備が整うのを待つことではなく、公的な支援制度も借りながら、最初の90日を区切って小さく試し、学び、次に活かすことです。私たちラクフル自身、まだ道半ばの挑戦者にすぎません。それでも、小さな会社こそ世界で戦えると信じて、一歩ずつ前へ進んでいきます。同じように迷っている経営者の方の背中を、少しでも押せたなら嬉しく思います。

よくある質問

Q. 越境ECは、どれくらいの規模の会社から始められますか?

A. 規模の下限は決まっていません。私たちは社員33名の会社ですが、1つの商材・1つの市場に絞ってテスト的に始めることは、より小規模な会社でも可能だと考えています。

Q. 語学が得意な担当者がいなくても始められますか?

A. JETROの越境EC支援事業パートナー制度など、多言語化や現地対応を外部の専門知見に頼れる仕組みがあります。すべてを自社だけで抱える必要はありません。

Q. ラクフルはすでに越境ECを本格的に行っているのですか?

A. いいえ。現時点では本格化に向けて計画・準備を進めている段階です。この記事も、実績の誇示ではなく、中小企業としての考え方をお伝えするものです。

Q. まず何から手をつければよいですか?

A. 自社サイトでの直接販売・海外モール出店・代理購入経由という3つの形の違いを理解した上で、JETROなどの公的支援制度を確認し、最初の90日を目安に小さく試せる商材と市場を1つ決めることから始めるとよいと考えています。

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公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社

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