服はなぜ捨てられるのか|衣類廃棄の現状データと、今日からできる選択

クローゼットを開けて、去年一度も袖を通さなかった服を数えてみてください。1着や2着では、きっと済まないはずです。それ自体は、責められることではありません。誰の家にも、着られるのに着ていない服はあります。

問題は、その先にあります。着られなくなったわけでも、飽きたわけでもない服は、たくさんあります。それでも手放す段になると、多くの人が「捨てる」以外の道を思いつかないまま、ごみ袋に入れてしまいます。私たちラクフルは、大阪・豊中でアパレルの通販事業と、リユース品を扱うECの両方を営んでいます。服が新品として生まれる現場と、誰かの手を離れたあとの現場。私たちはその両方に立つ会社として、今日は「衣類廃棄」という問題に正面から向き合います。

難しい話ではありません。日本で服はどれくらい捨てられているのか、なぜ着られる服が捨てられてしまうのか、そして今日から何を変えられるのか。順番に、できるだけ具体的な数字とともにお伝えします。

この記事で分かること

  • 日本で1年間に手放される衣類の量と、その行き先の内訳(リユース・リサイクル・廃棄の割合)
  • 1着の服をつくるためにかかっているCO2・水という環境負荷の大きさ
  • まだ着られる服が捨てられてしまう、生活者側・業界側それぞれの構造的な理由
  • 日本と世界で進む「衣類廃棄を減らす」政策・規制の動き
  • 今日から始められる、服の手放し方・買い方の選択肢

家庭から手放され、リユースもリサイクルもされずに燃やされたり埋め立てられたりする服は、年間約46万トン。1日あたりに換算すると、大型トラック約130台分です。

日本で服は、どれくらい捨てられているのか

まず、規模の話から始めます。環境省によると、2024年に日本国内に供給された衣服はおよそ35億着です。1990年の約20億着と比べると、供給量は1.8倍に膨らんでいます。私たちが着る服の絶対量そのものが、この30年余りで大きく増えました。

一方で、家庭から手放される衣類の量は年間79.6万トン(2025年度推計)にのぼります。この服たちが、どこへ向かっているのか。環境省の調査で、その行き先が明らかになっています。

家庭から手放された衣類の行き先(回収経路別) 割合 量(推計)
可燃・不燃ごみ等として廃棄 55% 約43.8万トン
古着として販売 18% 約14.2万トン
行政回収(集団回収は除く) 13% 約10.4万トン
集団回収 6%
民間業者による回収等 5%
譲渡・寄付 3%

この表は、服がどこに引き取られたかという回収経路別の内訳です。一方、手放される服のうち、実際にリユース(古着として販売・譲渡・寄付など)にまわる割合は35%(27.5万トン)。リサイクルは7%(6.0万トン)と集計されています。残りの58%(46.1万トン)は、焼却や埋め立てといった処分に向かいます。この3分類は、回収されたあとの最終的な行き先で数え直したものです。たとえば集団回収や民間業者回収(合わせて11%)の服にも、この先でリユース・リサイクルに回るものが含まれます。そのため、古着として販売(18%)と譲渡・寄付(3%)の合計21%だけが、リユースの実数というわけではありません。

環境省はこの46.1万トンを「大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしている」規模と換算しています。私たちが普段目にする機会のない量ですが、想像すると決して小さな数字ではありません。ここまでの数字は、いずれも「家庭」から手放された衣類の範囲です。視点を事業所まで広げると、国内で新たに供給される衣類は年間82万トン(家庭向け・事業所向けの合計)にのぼります。このうち約6割にあたる約50万トン(事業所と家庭の合計)が、最終的に焼却等で処理されていると推計されています。つくられる量と、燃やされる量が、これほど近い水準にあるのが今の日本の現実です。

なぜ、まだ着られる服が捨てられてしまうのか

ここで、視点を「量」から「一人ひとりの行動」に移します。環境省のアンケート調査によると、1人あたりの衣類との付き合い方は次のような数字になっています。

1人あたり(年間平均) 枚数
購入する服 約19枚
手放す服 約11枚
1年間一度も着られていない服 約24枚

購入枚数(19枚)と手放す枚数(11枚)を単純に差し引きすると、毎年8枚ずつ、家の中に服が積み上がっていく計算になります。そして見過ごせないのが、「1年間一度も着られていない服」が1人あたり約24枚もあるという数字です。

この24枚は、まだ捨てられてもいない服です。クローゼットの中で、出番を待ったまま眠っている服です。冒頭で「1着や2着では済まない」と書いたのは、この数字を踏まえてのことでした。多くの人にとって衣類廃棄の入り口は、「捨てる瞬間」ではありません。その手前にある「着なくなった服をどうするか決めないまま、時間だけが過ぎていく段階」にあります。

なぜ、こうなるのでしょうか。理由は一つではありませんが、大きく三つに整理できます。一つ目は、服そのものが以前より安く、手に入りやすくなったことです。手軽に買えるぶん、一着ずつへの思い入れも薄れやすくなります。二つ目は、流行の移り変わりが早くなったことです。「まだ着られるけれど、なんとなく古い」という感覚で手放すケースが増えています。三つ目は、手放す手段そのものへの心理的なハードルです。フリマアプリへの出品も、古着店への持ち込みも、寄付も、「捨てる」より一手間かかります。忙しい毎日の中では、結局いちばん簡単な「ごみ袋に入れる」が選ばれてしまいがちです。

ただし、これは生活者側だけの理由ではありません。業界側にも、廃棄を後押ししている構造があります。トレンドの移り変わりを前提にした短いサイクルでの新作投入や、シーズンごとのセールを見込んだ生産計画があります。これらは結果として、「安く・大量に・こまめに」買い替える動きを後押ししやすくなります。作る側と買う側、両方の仕組みが噛み合って、今の衣類廃棄という問題が生まれています。

私たちがこの記事で伝えたいのは、「もっと我慢して服を減らしましょう」という話ではありません。今すでに家にある服との付き合い方を、少し変えてみる。その一歩から、この構造は動き始めます。

服1着をつくるのに、どれだけの資源が使われているか

捨てられる側の数字を見てきましたが、そもそも服1着をつくることには、どれくらいの環境負荷がかかっているのでしょうか。環境省の資料によると、服1着あたりの環境負荷は、原材料の調達から製造段階までの換算で示されています。CO2排出量は約25.5キログラムで、500ミリリットルのペットボトル約255本を製造するのと同じ量です。水消費量は約2,300リットルで、浴槽約11杯分にあたります。

国内に供給される衣服の製造に必要な水の量は、年間で約83億立方メートル。そのうち約9割は、素材となる綿(コットン)の栽培によるものです。1着の服の裏側には、私たちが手にする前の段階で、これだけの資源がすでに使われています。

この事実を知ると、「まだ着られる服を、そのまま処分してしまう」ことの意味が少し違って見えてきます。廃棄されるのは服という「モノ」だけではありません。それをつくるために投じられた水やエネルギーも、一緒に失われています。手放し方を一つ変えれば、その資源をもう一度誰かの生活に活かせるとしたら、それは我慢ではなく、賢い選択だと私たちは思います。

日本と世界で進む、衣類廃棄を減らす動き

衣類廃棄は、個人の心がけだけの問題ではなく、政策としても対応が進められているテーマです。国内の法律は、廃棄物・リサイクル対策の優先順位を定めています。「リデュース(発生抑制)」に次いで「リユース(再使用)」が2番目、リサイクルはその下です。この優先順位の考え方は、別記事「リユースとサステナビリティ」で詳しく解説しています。ここでは、衣類に固有の政策目標を見ていきます。

環境省は、家庭から手放され焼却・埋め立てにまわる衣類の量について削減目標を掲げています。2030年度までに38.6万トン(2020年度比25%減に相当)への引き下げが目標です。現状の46.1万トン(2025年推計)からは、さらに7.5万トンの削減が必要という試算です。数字だけを見ると小さな差に思えますが、日本全体の「捨てる服」を確実に減らす必要があることを意味しています。

海外でも、規制の動きが具体化しています。欧州連合(EU)では「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」が2024年7月に発効しました。売れ残った衣類・履物の廃棄を禁止する規定が、そこに盛り込まれています。適用は企業規模ごとに段階を追う設計で、大企業は2026年7月19日から義務化されます。まさに今、世界の大手アパレル企業が「つくった服を、売れ残ったからといって捨てられない」時代に入ろうとしているところです。日本でも今後、同様の議論が広がっていく可能性があります。

今日からできる、服との付き合い方の選択肢

ここまでの数字を踏まえて、生活者として今日から変えられることを整理します。大きく分けると、「手放すとき」と「買うとき」の二つの場面があります。

手放すときにまず考えたいのは、「捨てる」以外の道を先に検討することです。フリマアプリへの出品、古着店への持ち込み、地域や自治体の回収、団体への寄付。どれもごみ袋に入れるより一手間かかりますが、まだ形が残っている服を次の誰かに使ってもらえる可能性が広がります。それぞれの手段に向く服の状態や、選び方の詳しい比較は、今後の記事で詳しく解説する予定です。

買うときには、「安いから」「流行っているから」だけで選ばないことです。長く着られるかどうかを、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。そして、新品だけでなく中古・リユース品を選択肢に加えることも、有効な手段の一つです。中古品と聞くと状態や衛生面に不安を感じる方もいらっしゃると思います。その不安への向き合い方は、私たちが別記事「リユースとサステナビリティ」で詳しく紹介しています。

大切なのは、どちらか一方を選ぶことではありません。新品を大切に長く着ることと、着なくなった服にリユースという出口を用意しておくこと。この両方を無理なく生活に組み込んでいくことが、衣類廃棄を減らす現実的な道筋だと私たちは考えています。

アパレルとリユース、二つの現場から見えること

私たちラクフルは、新しい服を届けるアパレル通販の事業を、大阪・豊中の地で営んでいます。同時に、一度誰かの手に渡ったモノを次の人へつなぐリユース事業も営んでいます。一次流通(新品)と二次流通(中古)、双方の現場に立っているからこそ気づくことがあります。

それは、服の一生は「買われた瞬間」で終わるのではなく、「手放されたあと」まで含めて設計できるということです。アパレル事業では、「Mサイズ」という表記だけに頼らず実寸を明記しています。撮影の光や色再現にもこだわり、「思っていたのと違う」という不安に先回りしています。詳しくは別記事「アパレルEC 舞台裏」でお伝えしています。リユース事業では、一点ずつ動作を確認し、キズや使用感も隠さず撮影しています。状態を「良い」「並」といった曖昧な言葉だけで済ませないことも徹底しています。詳しくは別記事「リユースECのこだわり」でお伝えしています。この二つは別々の仕事のようでいて、どちらも「一着の服を、無駄にしないための仕事」だと私たちは捉えています。

越境ECをはじめ、私たちはこれから新しい挑戦にも取り組んでいきたいと考えています。その先でも、この視点は変えるつもりはありません。服を売る会社であると同時に、服を次の人へつなぐ会社でもある。この両輪を大切にしていきたいと思っています。

まとめ:捨てる前に、もう一つの選択肢を

日本では年間79.6万トンの衣類が家庭から手放されています。そのうち58%にあたる46.1万トンが、リユースもリサイクルもされずに焼却・埋め立てられています。1人あたり年間約24枚の服が、一度も着られないまま眠っています。この事実は、多くの人にとって他人事ではなく当事者の話だと示しています。

服を大切につくり、大切に着て、着なくなったら次の人へつなぐ。この記事で紹介した数字は、決して読者を責めるためのものではありません。今日、クローゼットを開けたときに、その一着をどうするか。まずは一着だけでも、「捨てる」以外の道を試してみてください。手放し方の詳しい比較や、中古品選びの不安への向き合い方は、次の記事でも詳しくお伝えしていきます。

よくある質問

Q. 手放した服のうち、実際にリユースされているのはどれくらいですか?

A. 環境省の調査によると、家庭から手放される衣類のうち、リユースにまわる割合は35%(年間約27.5万トン)です。ここには古着としての販売のほか、譲渡・寄付なども含まれます。リサイクルは7%で、残りの58%は焼却や埋め立てなどの処分にまわっています。

Q. 「衣服ロス」とは何ですか?

A. 食品ロスと同じ発想で、まだ着られるのに廃棄されてしまう服を指す言葉です。決められた定義があるわけではありません。本記事で扱った「家庭から手放され、焼却・埋め立てにまわる年間約46万トンの衣類」は、その中心的な部分にあたります。

Q. 着なくなった服を手放したいとき、どんな方法がありますか?

A. 主にフリマアプリへの出品、古着店への持ち込み、自治体や地域の回収、団体への寄付といった方法があります。服の状態やブランド、量に応じて向き不向きがあるため、それぞれの特徴を比較した記事を今後公開予定です。

Q. 服1着をつくるのに、そんなに環境負荷がかかっているのですか?

A. 環境省の資料によると、服1着あたりの環境負荷は原材料調達から製造までの段階で算出されています。CO2排出量は約25.5キログラム、水消費量は約2,300リットルにのぼるとされています。まだ着られる服を安易に廃棄すると、この資源も一緒に失われてしまうことになります。

Q. サステナブルファッションを、何から始めればいいですか?

A. 難しく考える必要はありません。まずはクローゼットの中で1年以上着ていない服がないか確認し、リユース・譲渡・寄付といった手放し方を一つ知っておくこと。そして次に服を買うときに、中古・リユース品も選択肢に加えてみること。その二つから始めれば十分です。

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公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社(アパレル・リユース事業の現場より)

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