EC物流の全体像|受注から梱包・出荷・配送・返品まで工程別に解説

「注文が入ってから、荷物が玄関に届くまで」。ECサイトの画面には映らないこの区間で、実はお店の評価の大半が決まっています。商品ページがどれだけ魅力的でも、違う商品が届いたり、箱がつぶれていたりすれば、その一度で信頼は崩れてしまうからです。

私たちラクフルは、大阪・豊中でリユース品やアパレルを中心に、一点ものの商品を複数のモールで販売している会社です。スタッフ33名(パート・アルバイト含む)の現場で、受注から出荷までの工程を日々回しています。物流は、私たちにとって「業務の一部」ではなく、お客様との約束を果たす仕事そのものです。

この記事は、これから物流体制を整えたい中小のEC事業者の方に向けて、EC物流の全体像を工程別に解説するものです。受注、ピッキング、検品、梱包、出荷、配送、そして返品。ネットショップの発送の仕組み全体を1枚の地図にして、各工程で何をすべきか、どこでつまずきやすいかをお伝えします。公的な統計と制度、そして現場の実務感覚の両方から確かめていきましょう。

読み終えたとき、「物流はコストで、面倒なもの」という見え方が、「物流は設計できるもので、お店の強みになるもの」へ変わっていれば、この記事の役目は果たせたことになります。

この記事で分かること

  • EC物流の6工程(受注〜配送)と返品を加えた全体図
  • 工程ごとの実務ポイントと、つまずきやすい箇所・改善の着眼点
  • 配送品質が顧客体験を左右する理由と、再配達率・受取多様化の最新データ
  • 物流の2024年問題・改正物流効率化法など、荷主であるEC事業者に関わる制度の動き
  • 物流コストの捉え方と、自社出荷か外注(3PL)かを考える入口

結論:EC物流は6工程の連鎖。規模を追う前に、標準化が先です

先に結論をお伝えします。EC物流とは、受注、ピッキング、検品、梱包、出荷、配送という6つの工程が鎖のようにつながった仕事です。そして鎖である以上、どこか1つの工程が乱れると、その乱れは必ず下流へ伝わります。

受注処理で在庫の引き当てを誤れば、ピッキングする商品がそもそも存在しません。ピッキングで棚を間違えれば、検品で気づけない限り誤出荷になります。梱包が甘ければ、配送のどこかで破損します。つまり「配送トラブル」に見える事故の多くは、実はもっと上流の工程で生まれているのです。

だからこそ、私たちの結論はこうなります。売上規模を追う前に、工程ごとの標準化から着手すること。標準化とは、「誰がやっても、同じ手順で、同じ品質になる」ように仕事のやり方を決めておくことです。1日10件の出荷でも100件の出荷でも、この順番は変わりません。むしろ件数が少ない今こそ、標準化のいちばんの好機です。

標準化ができていない状態で件数だけが増えると、ミスは件数以上のペースで増えます。逆に、工程が標準化されていれば、量が増えても品質は崩れにくく、人に仕事を渡すことも、あとで外部へ委託することもできるようになります。私たちがバリューのひとつに掲げる「再現性」は、まさにこの考え方です。EC運営全体を仕組みで回す話は「『たまたま売れた』を、なくす。」で詳しく書いています。

全体図:EC物流の流れを、注文から返品まで一望する

まず、全体の地図を持ちましょう。EC物流の流れは、次の表のように整理できます。なお、受注から出荷・配送、その後の対応までの一連の業務は、まとめて「フルフィルメント」とも呼ばれます。言葉は新しく聞こえますが、中身はこの表のとおり、昔から続く地道な仕事の連なりです。

工程 主な仕事 つまずきやすいポイント
1. 受注 注文内容の確認、在庫の引き当て、出荷指示 複数チャネル間の在庫ズレ、売り越し
2. ピッキング 保管場所から対象商品を取り出す 保管場所のルール(ロケーション管理)が曖昧
3. 検品 商品・数量・状態を注文と照合する 「見たつもり」の目視頼み、基準の個人差
4. 梱包 商品保護と箱サイズの最適化、同梱物 過剰包装と保護不足の両極端
5. 出荷 送り状発行、運送会社への引き渡し、追跡番号の通知 締め時間の管理、通知漏れ
6. 配送 運送会社による輸送・配達 遅延・破損・再配達への備え不足
(7. 返品) 返品受付、状態確認、再販または処分 ルールと動線が未設計のまま場当たり対応

返品にカッコを付けたのは、すべての注文で発生する工程ではないからです。ただし、発生してから考える工程でもありません。返品は「逆向きに流れる物流」であり、あらかじめ受付ルールと社内の動線を決めておけば、十分に設計できる仕事です。返品物流(リバースロジスティクス)の設計は、今後の記事で詳しく解説する予定です。

この地図を頭に置いたうえで、ここからは工程を順に歩いていきます。自社のどこに改善の余地があるか、照らし合わせながら読んでみてください。

受注から検品まで:ミスの芽は、出荷する前に摘む

受注処理:在庫の引き当てが最初の関門です

受注処理の中心は、注文情報の確認と在庫の引き当てです。引き当てとは、「この注文にはこの在庫を充てる」と確定させること。ここが正確でないと、後工程のすべてが砂上の楼閣になります。

特に注意したいのが、複数のモールや自社サイトに同時出品している場合です。あるモールで売れた商品を、別のモールの在庫からすぐに引かないと、同じ商品が二重に売れる「売り越し」が起きます。私たちは一点ものの商品を複数モールで販売しているため、この怖さを日々実感しています。一点ものは在庫が1点しかないので、更新の遅れが即、売り越しにつながるのです。だから「売れたら、その場で全チャネルの在庫を更新する」を鉄則にする。ツールで在庫を連携させる場合も、この原則を自動化しているにすぎません。

受注処理で決めておきたい標準は、シンプルに3つです。注文を確認する時刻を決めること。在庫を更新する手順と担当を決めること。そして、ギフト指定や配送日時指定などの「例外注文」の扱いを、あらかじめ文書にしておくことです。

ピッキング:探す時間は、価値を生まない時間

ピッキングは、保管場所から注文の商品を取り出す工程です。ここでの敵は「探す時間」。商品がどこにあるか分からず倉庫を歩き回る時間は、お客様にとって何の価値も生みません。

対策の基本はロケーション管理です。棚に番地をつけ、「どの商品がどの番地にあるか」を台帳やシステムで管理する。それだけで、探す時間は劇的に減ります。多品種を扱うお店ほど、そして商品の入れ替わりが激しいお店ほど、この効果は大きくなります。

リユースのような一点もの中心の商売では、同じ商品名でも状態がひとつずつ違うため、「商品1点=管理番号1つ」で扱うのが原則です。手間はかかりますが、この原則を守ると、ピッキングの間違いは構造的に起きにくくなります。似た商品を取り違える余地が、そもそもないからです。

検品:出荷前の最後の砦

検品は、注文と商品を照合する最終チェックです。商品は合っているか。数量は正しいか。状態は商品ページの説明どおりか。ここを通過した荷物は、もうお客様に届くまで誰もチェックできません。

検品で大切なのは、目視の集中力に頼らないことです。人の注意力は、忙しい日ほど落ちます。注文票と商品の管理番号を突き合わせる。バーコードで照合する。チェック項目を紙やシステムで固定する。こうして「注意しなくても間違いに気づける」仕組みへ寄せていくのが、標準化の方向です。この仕組みづくりは、誤出荷を防ぐだけではありません。注意力をすり減らさずに働ける環境を整えることは、働く仲間を守ることでもあります。

私たちの現場では、検品はとりわけ重みのある工程です。リユース品は一点ごとに状態が違うため、状態の見極めと説明がそのまま商品の信頼になるからです。傷の位置、動作の確認、付属品の有無。良いところも悪いところも正直に確かめて出荷する。この裏側は「リユース事業のこだわり」でもお話ししています。

梱包と出荷:守り、無駄なく、気持ちよく届ける

梱包は「保護・サイズ・体験」の3軸で設計する

梱包の目的は、突き詰めると3つです。第一に、商品を無事に届けること(保護)。第二に、送料を無駄に上げないこと(サイズ)。宅配便の運賃は箱の大きさで区分が変わるため、商品に対して大きすぎる箱は、そのまま送料の上振れになります。第三に、開けた瞬間の体験を良くすること(開梱体験)。荷物を開ける瞬間は、お店とお客様が「対面」する唯一の瞬間です。

この3つは、ときどき衝突します。保護を厚くすれば箱は大きくなり、送料が上がる。簡素にすれば破損リスクが上がる。だから梱包は、商品ごとに最適な着地点を決める「設計業務」です。よく使う商品サイズごとに資材と手順を標準化しておくと、品質が安定し、資材の在庫管理も楽になります。資材選びや破損防止の具体的な手順は、今後の記事で詳しく解説する予定です。

出荷:締め時間と「知らせること」までが仕事

出荷の工程は、送り状の発行、荷物と伝票の最終照合、運送会社への引き渡しで構成されます。実務の鍵は「締め時間」の管理です。当日出荷の受付を何時までにするか、集荷は何時か。この時刻を決めて商品ページやストア情報に明記しておくと、社内の段取りもお客様の期待値も安定します。

もうひとつ忘れがちなのが、出荷通知です。追跡番号を添えて「発送しました」と知らせた瞬間から、お客様の待ち時間は「不安な待ち時間」から「楽しみな待ち時間」に変わります。荷物が見える化されているだけで、問い合わせは減り、体験は良くなる。手間の割に効果の大きい、地味で優れた一手です。

配送:運送会社に委ねても、お店の責任は続く

配送の工程は、運送会社の手に委ねられます。しかし「委ねる=関係ない」ではありません。お客様にとって、玄関先に現れる配達員さんは、お店の代わりに商品を手渡してくれる存在です。だから私たちは、こう捉えています。

運ぶ工程は委ねられても、届ける責任は委ねられない。荷物がお客様の手に渡るその瞬間まで、お店の仕事は続いている。

数字で見る規模:年間50億個、上位3便で約95%

規模感を数字で確かめておきましょう。国土交通省「令和6年度 宅配便・メール便取扱実績」(2025年8月公表)によると、2024年度の宅配便取扱個数は50億3,147万個。単純に割れば、1日あたり1,300万個超の荷物が国内を動いている計算です。同発表によれば、宅急便・飛脚宅配便・ゆうパックの上位3便で、全体の約95.2%を占めます。

つまり中小のECにとって、運送会社の選択肢は事実上この大手3社が軸になります。だからこそ「どの会社を選ぶか」と同じくらい、「選んだ会社とどう組むか」が品質を分けるのです。

運送会社選び:料金表より先に見る4つの判断軸

とはいえ、最初の選定と定期的な見直しには判断軸が要ります。料金の数字だけで決めず、次の4点を自社の商材と突き合わせてみてください。

  • サイズ・重量の制限:扱う商品の最大サイズ・重量が規格に収まるか。サイズ区分が1つ変わるだけで、運賃は大きく変わります
  • 補償の範囲:万一の破損・紛失のとき、どこまで補償されるか。高単価な商品や一点ものを扱うほど重要です
  • 集荷時間と拠点網:当日出荷の締め時間と集荷時刻がかみ合うか。持ち込みできる営業所や取扱店が近くにあるか
  • 商材との相性:割れもの・大型・アパレルなど、商品の特性に合ったサービスや専用資材があるか

そのうえで、荷物の渡し方を整えることを忘れないでください。梱包の頑丈さ、伝票の正確さ、安定した荷姿。「運びやすい荷主」であることが、最も確かな配送品質対策だと私たちは考えています。

受け取り方の変化:再配達率7.6%、多様な受取は3割超へ

受け取り側の環境も、いま大きく動いています。国土交通省のサンプル調査によると、宅配便の再配達率は2026年4月時点で約7.6%。前回調査(2025年10月)の約8.3%から改善しました。置き配・宅配ボックス・コンビニ受取などの「多様な受取方法」の利用率は約31.0%で、初めて3割を超えています(いずれも2026年7月公表)。政府は2026年3月に閣議決定した総合物流施策大綱(2026〜2030年度)で、目標も掲げました。この利用率を、2030年度までに50%程度へ引き上げるというものです。

EC事業者にできることは明確です。注文時に置き配や日時指定の選択肢をきちんと提示すること。出荷通知と追跡番号で受け取りの準備をしやすくすること。一度で受け取ってもらえる荷物は、お客様にとっても、運ぶ人にとっても、環境にとっても幸せな荷物です。届いたあとの問い合わせや評価への向き合い方は、「いい会社は、いい顧客対応から生まれる」が参考になるはずです。

物流コストの構え方:4つの引き出しで捉える

物流のコストは、どんぶり勘定になりやすい費用の代表です。「送料」とひとことで呼ばれがちですが、実際には性質の違う費用が混ざっています。まずは4つの引き出しに分けて捉えましょう。

費目 中身 見直しの視点
配送費(送料) 運送会社に支払う運賃 サイズ区分の適正化、配送方法の使い分け
資材費 段ボール・緩衝材・テープ・同梱物 サイズの標準化、まとめ買い、過剰包装の見直し
保管費 倉庫・スペースの賃料、棚などの設備 売れない在庫が場所代を食っていないか
人件費 受注処理〜出荷作業にかかる作業時間 探す・迷う・やり直す時間の削減(標準化)

大切なのは、外に向かう前に内側を見ることです。運賃交渉のテーブルに着く前に、箱のサイズは適正か、探す時間ややり直しで人件費が漏れていないかを先に確かめる。自分たちで直せる部分を直してから交渉に臨むほうが、話も通りやすくなります。どの費目からどんな順番で改善するかは、それだけで1本の記事になるテーマなので、別の記事で詳しく扱う予定です。

もうひとつ、価格表示の話題にも触れておきます。消費者庁は2023年12月、「送料無料」表示の見直しについての考え方を公表しました。法律で禁止するのではなく、「送料当社負担」「〇〇円(送料込み)」といった表示への自主的な見直しを求める内容です。あわせて、送料を誰が負担しているのかを説明する責任も、事業者に求めています。2025年3月に閣議決定された第5期消費者基本計画にも、この理解を広げる取り組みが明記されました。配送には必ずコストと人の労働があります。「無料」の一言でそれを見えなくしないことは、価格設計の誠実さの問題でもあると私たちは受け止めています。

物流をとりまく社会の動き:2024年問題・再配達・環境配慮

ここからは、お店単位の工夫を越えた社会の話です。ただし他人事ではありません。EC事業者は、物流業界にとって「荷主」だからです。

2024年問題:荷主にも効率化への参加が求められています

物流の2024年問題とは、トラックドライバーの労働時間規制に伴う輸送力不足の問題です。2024年4月から、ドライバーには年960時間の時間外労働の上限規制が適用されました(国土交通省の解説による)。政府の関係閣僚会議が2023年10月に決定した「物流革新緊急パッケージ」には、重い推計が明記されています。何も対策を講じなければ、輸送力は2024年度に14%、2030年度には34%不足する可能性があるというのです。荷物の3分の1が運べなくなるかもしれない。これは配送業界だけの危機ではなく、ECという商売の土台の危機です。

制度も動きました。改正物流効率化法により、2025年4月から、すべての荷主と物流事業者に努力義務が課されています。中身は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役時間の短縮の3つです。さらに2026年4月には、一定規模以上の荷主等を対象とする特定事業者制度も施行されました。規模の大小を問わず、「運んでもらう側」にも効率化への参加が求められる時代になったのです。

再配達削減:受け取り方が変わり、ルールも変わりつつあります

再配達は、荷主と消費者の両方が関わる代表的な論点です。その重みを示すデータと、最近の動きを整理します。

データ・動き 内容 出典・時期
再配達によるCO2排出 再配達のトラックが排出するCO2は年間およそ25.4万トン 国土交通省試算(2020年度)
労働力への換算 当時約1割だった再配達は、年間約6万人のドライバーの労働力に相当 同上
ポイント還元の実証 置き配の選択で再配達率が最大3.1ポイント低下 国土交通省検討会提言(2025年11月公表)
受け取りルールの見直し 置き配など非対面の受け取りを宅配便の標準サービスに位置づける約款改正の方針(施行は2026年度以降の見通し) 同提言を受けた方針

国土交通省の試算は2020年度のもので、当時の再配達率は約1割でした。前述のとおり足元では7%台まで下がっていますが、それでも再配達が大きな社会的コストであることに変わりはありません。その削減を後押しするため、2024年10月に始まった置き配等へのポイント還元の実証事業では、上の表のとおり効果が確認されています。

EC事業者にできる貢献は、派手ではありませんが確実にあります。正確な住所情報と適切な荷姿で「運びやすい荷物」を出すこと。置き配や日時指定を選びやすい導線を用意すること。出荷をむやみに分割しないこと。ひとつひとつは小さくても、年間50億個の荷物の上流にいる私たち荷主の行動は、確実に積み重なります。

環境配慮と梱包:過剰包装と破損防止のあいだ

物流の環境負荷というと配送のCO2が注目されがちですが、EC事業者が直接コントロールできるのは、むしろ梱包です。

制度から確認します。2022年4月、プラスチック資源循環促進法が施行されました。製品の設計から廃棄までの各段階で、プラスチックの削減と循環を事業者に求める法律です。国が同法に基づいて定めた「プラスチック使用製品設計指針」には、取り組むべき事項として「包装の簡素化(過剰な包装を抑制すること)」が明記されています。緩衝材や梱包資材を日々使うECにとって、無関係な制度ではありません。

消費者の目も厳しくなっています。内閣府の「プラスチックごみ問題に関する世論調査」(2022年9月調査)では、過剰だと思うプラスチック製品・サービスとして「通販などで運搬の際に使用される包装や緩衝材」を挙げた人が38.9%にのぼりました(複数回答)。約4割の人が、通販の包装や緩衝材を過剰だと感じている、ということです。

一方で、環境配慮を理由に保護を削って破損が増えれば、本末転倒です。壊れた商品の返送と再出荷は、二重の輸送と資材を発生させ、かえって環境負荷を増やします。つまりここでも答えは「設計」です。商品に対して適正なサイズの箱を選び、緩衝材は必要な箇所に必要なだけ使う。それは環境のためであると同時に、送料と資材費の削減でもあります。環境と経済が同じ方向を向く、数少ない気持ちのいい領域です。

心強いデータもあります。段ボールリサイクル協議会によると、段ボールの回収率は2024年度実績で97.8%。1平方メートルあたりの平均質量も2024年に594.4グラムと、2004年比で7.3%軽くなりました。段ボールは、回収と再生の輪がすでに高い水準で回っている資材です。EC梱包の主役が段ボールであることは、環境の観点からも理にかなっています。リユースと環境の話は「リユース×サステナビリティ」でも詳しく書いています。

自社出荷か、外注か:3PLという選択肢の輪郭

出荷件数が増えてくると、必ず一度は考えるのが物流の外注です。3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは、保管・ピッキング・梱包・出荷といった物流業務を、荷主に代わって専門事業者が包括的に担うサービスを指します。

市場も広がっています。矢野経済研究所の調査(2025年7月公表)によると、3PLを含む物流15業種の総市場規模は、2024年度に24兆6,405億円と推計されました。同調査は、3PLを今後も拡大が見込まれる業種のひとつに挙げています。外注という選択肢は、年々身近になっているのです。

向き不向きの入口だけ、整理しておきます。外注が力を発揮しやすいのは、商品が規格化されていて、同じ作業を大量に繰り返せる場合です。逆に、商品ごとに状態や形が違い、個別の判断が要る商売では、外部への引き継ぎ自体が難しくなります。私たちのような一点もの中心の現場は後者の典型で、検品や状態説明という判断業務が物流と一体になっているため、自社出荷を選んでいます。

そしてどちらを選ぶにしても、前提はひとつです。工程が標準化されていない業務は、外注できません。手順が言語化されているからこそ、外部のパートナーに渡せる。つまり本記事で述べてきた標準化は、自社出荷の品質向上と外注の準備の、両方に効く投資です。

まとめ:物流は、小さな会社の武器になる

要点を振り返ります。EC物流は、受注、ピッキング、検品、梱包、出荷、配送の6工程の連鎖であり、返品という逆向きの流れも設計の対象です。事故は下流で発覚し、上流で生まれます。だから、売上規模を追う前に工程ごとの標準化を。コストは4つの引き出しで捉え、改善は自分たちで直せる箇所から。そして、荷物がお客様の手に渡る瞬間まで、お店の仕事は続きます。

社会の側でも、2024年問題と輸送力不足の推計、荷主への努力義務、再配達削減と受け取り方の多様化、梱包の環境配慮と、物流を取り巻く前提は大きく動いています。この変化は、丁寧に荷物をつくり、丁寧に届けてきた事業者にとっては、むしろ追い風だと私たちは考えています。

物流には、広告のような派手さはありません。しかし、注文のたびに正確で気持ちのいい荷物が届くという体験は、どんな広告よりも強くお店を記憶させます。そして小さな会社には、一箱ごとに目を配れる距離の近さという強みがあります。大きな設備がなくても、今日の一箱から始められる。あなたのお店の一箱にも、同じ力があります。私たちは豊中の現場で、今日も一点ものの荷物をひとつずつ、次の誰かへ送り出しています。EC運営や物流まわりでお困りのことがあれば、ラクフルの事業紹介もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. フルフィルメントとは何ですか?EC物流とは違うのですか?

A. フルフィルメントは、受注から梱包・出荷・配送、さらに返品対応までの一連の業務全体を指す言葉です。本記事で解説した6工程+返品とほぼ同じ範囲を指すと考えて差し支えありません。「フルフィルメントサービス」という場合は、この一連の業務を代行する外部サービス(3PLなど)を指すのが一般的です。

Q. 最初にどの工程から標準化すべきですか?

A. 受注処理(在庫の引き当て)と検品をおすすめします。受注は全工程の起点で、ここでの誤りは後工程では直せません。検品は、出荷前に誤りを止められる最後のチェック地点です。この2つを文書化されたチェックの仕組みにするだけで、事故の大半は防ぎやすくなります。

Q. 再配達を減らすために、店側ができることはありますか?

A. あります。注文時に置き配・宅配ボックス・日時指定などの選択肢を分かりやすく提示すること、出荷時に追跡番号つきの通知を送り受け取りの準備をしやすくすることです。国土交通省の調査では再配達率は約7.6%(2026年4月時点)まで下がっており、受取方法の多様化を店側が後押しする意味は大きいはずです。

Q. 「送料無料」と表示しても問題ないのでしょうか?

A. 法律で禁止されてはいません。ただし消費者庁は2023年12月に公表した考え方の中で、「送料当社負担」「〇〇円(送料込み)」といった表示への自主的な見直しと、送料の負担についての説明責任を事業者に求めています。配送コストの実態を隠さない表示は、お客様との信頼関係の面でも検討する価値があります。

Q. 物流の外注(3PL)は、いつ検討すべきですか?

A. 目安は「工程の標準化が済んでいて、それでも物量が社内の処理能力を超え続けるとき」です。手順が言語化されていない業務は外部に引き継げないため、外注の検討は必ず標準化とセットになります。まずは本記事の工程分解に沿って、自社の手順を文書にするところから始めてみてください。

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参考情報・出典

公開: 2026年7月12日 / 最終更新: 2026年7月12日 / 執筆: ラクフル株式会社(EC事業の現場より)

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