商品登録が積み上がっているのに、説明文を書く手が追いつかない。そんな悩みから、AIライティング(生成AIによる文章作成)で商品説明文の下書きを任せるEC担当者が増えています。実際、AIに書かせると驚くほど速く、それらしい文章が出てきます。
ただ、出てきた文章をそのまま公開してよいかというと、話は別です。存在しない仕様を書いてしまう、実際より優れているように読める表現になる、ブランドの語り口とずれる。こうした事故は、AIの精度が低いからというより、公開前のチェックを飛ばしてしまうことで起きます。
この記事では、商品説明文づくりにAIを使うときの手順を4つのステップに分けて紹介します。公開前に必ず通したい3つのチェックも、実際のプロンプト例と直しの跡つきでお伝えします。私たちラクフルも、リユースEC・アパレルECで日々商品ページの文章と向き合う実務者です。実際に手を動かした結果を、これからお見せします。
この記事で分かること
- 商品説明文づくりでAIを使うときの、事実整理からリライトまでの4ステップ
- そのまま使えるプロンプトの型と、実際の生成例・直しの跡
- 公開前に必ず通したい「事実・法令・ブランドの声」3つのチェック
- 景品表示法(優良誤認表示)や著作権まわりで気をつけたい注意点
- 複数商品・複数モールでAI活用を効率化する運用の工夫
なぜ今、商品説明文づくりにAIが広がっているのか
商品説明文は、写真と並んでお客様が購入を決める最後の決め手になる部分です。それなのに、多くのEC現場では、商品登録の中でもっとも後回しにされがちな作業でもあります。入荷量が増えるほど、書く手は追いつきません。
生成AIは、この「書く手が足りない」という現場の悩みに、確かな効果を発揮します。素材・サイズ・状態といった事実の断片を渡すだけで、ある程度の体裁が整った文章をすぐに返してくれます。ゼロから文章を組み立てる時間を、大きく圧縮できるのは事実です。
一方で、AIは「事実を作る道具」ではなく「事実を文章にする道具」だと捉えておく必要があります。この前提を忘れて生成結果をそのまま公開すると、次章で見るような事故につながります。EC運営全体で、AIと人の役割をどう線引きするか。その判断軸は、別記事「AIに任せる仕事、人が守る仕事|これからのEC企業に必要な判断軸」で扱っています。この記事では、商品説明文という一つの作業に絞って手順化します。
AIが苦手なこと――そのまま使うと危険な理由
生成AIに商品説明文を書かせるとき、事故が起きやすいポイントは大きく3つあります。
一つ目は、事実の捏造です。渡していない仕様や実績を、もっともらしい言い回しで補ってしまうことがあります。商品ページの記述は、お客様との約束です。確認していない情報が紛れ込めば、届いた商品との食い違いという形で、信頼を一度に失います。
二つ目は、行き過ぎた表現です。「業界最高クラス」「誰でも失敗しない」といった、根拠のない優良さの断定は、AIが得意とする言い回しの一つです。こうした表現は、消費者庁が所管する景品表示法が禁じる「優良誤認表示」に触れるおそれがあります。同法は、商品の品質や内容を実際より著しく優れていると示す表示を、故意でなくても規制の対象としています。
三つ目は、ブランドの声とのずれです。AIが生成する文章は、どこかで見たような、無難で平板な言い回しに寄りがちです。誰が書いても同じような説明文が並ぶと、その店・その会社らしさは伝わりません。この3つの弱点を踏まえたうえで、次のステップに進みます。
商品説明文づくりの4ステップ
この記事のために、私たちが実際に手を動かして整理した、AIを使った商品説明文づくりの流れです。4つのステップに分けると、迷いどころが減ります。
ステップ1:事実を先に集め、AIに渡す材料をそろえる
いちばん大事なのは、AIに書かせる前の準備です。素材、サイズ、色、状態、付属品の有無、対象年齢や使用シーンなど、確認できている事実だけを箇条書きにします。ここで書くのは文章ではなく、事実のリストです。あいまいな情報や、自信のない数値は入れません。
ステップ2:プロンプトを型にして生成する
集めた事実を、決まった型のプロンプト(AIへの指示文)に流し込みます。型を毎回作り直さず使い回せば、生成のブレが減り、時間もさらに縮まります。次の章で、実際のプロンプト例をお見せします。
ステップ3:3つのチェックにかける
生成された文章を、事実・法令・ブランドの声という3つの観点で校正・確認します。詳しい見方は後述しますが、この工程を飛ばさないことが、AI活用を安全にする一番の分かれ目です。
ステップ4:直して、仕上げる
チェックで見つかった問題を直し、最後に人の目で通読します。読み上げてみて、不自然な言い回しやリズムの悪さがないかも確認します。ここまでやって、初めて公開できる状態になります。
実演:プロンプトと生成文の例文、直しの跡
言葉だけでは伝わりにくいので、実際に手を動かした例文をお見せします。ここでは説明のために、中古の小型キャリーケースという架空の商品を例に、ステップ1〜4を実演します。
まずステップ1で集めた事実です。
- 商品:中古のソフト素材キャリーケース(機内持ち込みサイズ)
- 状態:外側に薄い擦れが数カ所、目立った汚れやにおいはなし
- 付属品:取扱説明書なし、鍵は本体にダイヤル式で付属
- 内部:ポケット2つ、仕切り1枚
この事実だけを使って、次のようなプロンプトを作りました。
あなたはリユースECの商品ページ担当です。以下の事実だけを使って、商品説明文を200字程度で書いてください。事実にない情報(未確認の性能・実績・比較表現)は一切加えないでください。誇張した表現も避けてください。
事実:中古のソフト素材キャリーケース(機内持ち込みサイズ)。外側に薄い擦れが数カ所。目立った汚れやにおいはなし。取扱説明書なし。ダイヤル式の鍵は本体に付属。内部ポケット2つ、仕切り1枚。
ステップ2で得られた生成文(そのまま)は、次のような内容でした。
「業界トップクラスの耐久性を誇る、機内持ち込みサイズのソフトキャリーケースです。外側にわずかな使用感がありますが、ほとんど気にならないレベルで、まるで新品のような美しさを保っています。旅行のお供に最適な、どなたにも自信を持っておすすめできる逸品です。」
ここでステップ3のチェックにかけます。「業界トップクラスの耐久性」は事実にない誇張で、優良誤認表示のリスクがあります。「ほとんど気にならないレベル」「まるで新品のような美しさ」も、事実(薄い擦れが数カ所)より状態を良く見せすぎています。「どなたにも自信を持っておすすめ」も根拠のない断定です。
ステップ4で直した文章がこちらです。
「機内持ち込みサイズのソフトキャリーケース(中古)です。外側に薄い擦れが数カ所ありますが、目立った汚れやにおいはありません。内部はポケット2つと仕切り1枚で、旅行の荷物を分けて収納できます。ダイヤル式の鍵は本体に付属していますが、取扱説明書は付属しません。」
誇張表現をすべて外し、事実だけを、事実の通りの強さで伝える形に直しました。速さはAIに借りて、正確さと誠実さは人が最後まで責任を持つ。これが、私たちの考えるAI活用の実務です。
公開前に通す「3つのチェック」
実演で使った3つの観点を、あらためて整理します。どれか一つでも欠けると、事故の芽が残ります。
| チェック | 見るポイント | 見逃したときに起きること |
|---|---|---|
| 事実チェック | 渡していない仕様・実績・数値が追加されていないか | 届いた商品との食い違い、返品・クレームの増加 |
| 法令チェック | 優良誤認表示(景品表示法)にあたる誇張表現がないか | 行政指導・措置命令のリスク、消費者からの信頼低下 |
| ブランドの声チェック | 自社らしい語り口・トーンになっているか | どの店の説明文か分からない、無個性な商品ページ |
前述の通り、優良誤認表示は故意でなくても規制の対象になります。「必ず」「絶対」「業界最高」といった言い切り表現は、確認できる根拠がない限り避けるのが安全です。数値や比較表現を使う場合は、裏付けとなる事実をセットで示すことを基本にしています。
また、生成AIが既存の文章表現に似た結果を出してしまうリスクにも注意が必要です。文化庁は令和6年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表しました。ここでは、生成・利用段階での著作権侵害の考え方が整理されています。他社の商品ページの文章をそのまま模した生成結果になっていないかも、チェック項目の一つに加えておくと安心です。
よくある失敗パターンと直し方
実際に生成してみると、事実・法令・ブランドの声のどこかでつまずくパターンが繰り返し出てきます。代表的なものを整理しました。
| 失敗パターン | 直し方 |
|---|---|
| 渡していない仕様や実績が加筆される | プロンプトに「事実にない情報は加えない」と明記し、生成後に元の事実リストと一文ずつ照合する |
| 「業界最高」「誰でも満足」など根拠のない断定 | 比較表現・断定表現を機械的に洗い出し、根拠がなければ削除するか事実ベースの表現に置き換える |
| どの商品も同じような言い回しになる | その商品固有の事実(状態・エピソード・使用シーン)をプロンプトに具体的に足す |
| ブランドの語り口とずれる(硬すぎる・軽すぎる) | 自社の過去記事や商品ページを2〜3本、文体の見本としてプロンプトに添える |
効率化のコツとラクフルがこれから実践すること
カテゴリごとに使えるプロンプトの型をストックしておくと、生成のブレを抑えられます。事実リストの項目(素材・サイズ・状態・付属品など)も、商材別のフォーマットとして整えておきます。チームで共有すれば、生成から3つのチェックまでの一連の流れを誰でも回せるようになります。
私たちラクフルは、リユースEC・アパレルECの現場を持っています。本・ゲーム・アパレルなど、商材ごとに一点ずつ商品ページの文章と向き合ってきました。この実務の延長として、生成AIを商品登録の下書き作業に組み込んでいきます。あわせて、事実・法令・ブランドの声のチェック体制を社内の型として整えていくことも、これから実践していきます。速さを借りても、正直さは譲らない。そこは変えずに進めるつもりです。詳しくは事業・サービス紹介をご覧ください。
なお、この記事では文章づくりに絞ってお伝えしました。写真の見せ方やページ全体の情報設計まで含めた「商品ページの作り方」は、今後の記事で詳しく解説する予定です。
まとめ:AIは下書きの速さ、人は正確さと誠実さの最後の砦
生成AIは、商品説明文づくりの時間を大きく圧縮してくれる、実務上とても頼りになる道具です。ただし、事実の捏造・行き過ぎた表現・ブランドの声とのずれという3つの弱点があることを、使う側が知っておく必要があります。
事実を先に集め、型のあるプロンプトで生成し、事実・法令・ブランドの声の3つのチェックを通してから公開する。この4ステップさえ守れば、AIの速さを安全に商品ページへ取り込めます。書く手が足りないという悩みは、正しい手順を持てば、着実に軽くなっていきます。
よくある質問
Q. AIが生成した文章を、そのまま公開しても大丈夫ですか?
A. おすすめしません。生成AIは事実にない仕様や実績を加筆したり、優良誤認表示にあたる誇張表現を使ったりすることがあります。事実・法令・ブランドの声の3つのチェックを通してから公開することを、必ずルールにしてください。
Q. 生成した文章の著作権は気にしなくていいのですか?
A. 文化庁は令和6年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表しました。ここでは、生成・利用段階における著作権侵害の考え方が整理されています。既存の商品ページの文章に酷似した結果が出ていないかは、公開前のチェック項目の一つに加えておくと安心です。個別の判断に迷う場合は、専門家への相談をおすすめします。
Q. 同じ生成文を複数のモールにそのまま使い回してもいいですか?
A. モールごとに表記ルールや推奨される書き方が異なる場合があります。生成した文章をベースにしつつ、各モールの規約や表示ルールに沿っているかを個別に確認したうえで使うのが安全です。
Q. どの商品も似たような説明文になってしまいます。どうすればいいですか?
A. 事実リストが一般的すぎると、生成結果も一般的になりがちです。その商品固有の状態や使用シーンなど、具体的な事実をプロンプトに増やすことで、商品ごとの違いが文章に表れやすくなります。
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参考情報・出典
- 消費者庁「優良誤認とは」(公表日不明(2026年7月13日閲覧))
- 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日公表)
公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社
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