送料も、段ボールも、去年より高い。それなのに、売上は伸びているのに手元に残るお金は増えていない――そんな感覚に心当たりのある方は、少なくないと思います。
私たちラクフルは、大阪・豊中でリユース・アパレルを中心に複数のECモールを運営しています。一点ものを自社で梱包し、自社で出荷する現場を日々回している私たちにとって、物流費の重さは他人事ではありません。値上げのニュースが出るたびに、送料表を見直す。そんな作業を、私たちも繰り返してきました。
この記事では、物流コストを「送料」「資材」「保管」「人件費」の4つに分けて捉えます。どこから手をつけるのが安全か、送料無料ラインをどう決めるか。自社出荷と外注、それぞれどんな軸で選べばよいかを、公的データとともに整理します。ここでいう外注とは、発送代行や3PL(サードパーティ・ロジスティクス)を指します。保管・梱包・出荷などの物流業務を、専門業者に任せる仕組みです。EC物流コストの見直しは、受注から配送までの工程全体を理解したうえで進めると効果的です。工程ごとの詳しい解説は、別記事「EC物流の全体像|受注から梱包・出荷・配送・返品まで工程別に解説」にまとめました。本記事はその中の「コスト」というテーマだけを掘り下げます。
送料の値上げ交渉より先に、やれることがあります。コストは、費目に分けて初めて削れる場所が見えてきます。
この記事で分かること
- 物流コストを「送料・資材・保管・人件費」の4つに分解して捉える視点
- 削減に着手する順番と、なぜ送料交渉から始めるべきではないのか
- 送料無料ラインを、値引きではなく損益設計として決める考え方
- 保管や返品にひそむ、見落としがちな「隠れコスト」
- 自社出荷と外注(3PL)、どちらを選ぶかの判断軸
結論:着手は送料交渉からではなく、サイズダウンから
物流コストの見直しは、運送会社との送料交渉から始めたくなります。ですが、それは実は遠回りです。私たちは「サイズダウン(資材・梱包サイズの見直し)→資材標準化→作業時間短縮」の順で着手するのが安全だとみています。理由は単純で、資材のサイズを見直すと配送運賃の区分そのものが下がり、効果がいちばん早く、いちばん大きく出るからです。
そしてもう一つの結論は、「送料無料」は値引きのサービスではなく、損益設計だということです。どこまでの金額なら自社が送料を負担しても利益が残るのか。ここを曖昧にしたまま「送料無料」を掲げると、売れるほど利益が薄くなるという逆転が起こります。以下、それぞれを詳しく見ていきます。
背景:なぜ今、物流コストがここまで重くなっているのか
物流コストが締めつけてくる背景には、荷物の量そのものの増加と、運ぶ側の構造変化があります。国土交通省によると、2024年度(令和6年度)の宅配便取扱個数は50億3,147万個で、前年度比約0.5%の増加でした。宅配便のうち「宅急便」(ヤマト運輸)・「飛脚宅配便」(佐川急便)・「ゆうパック」(日本郵便)の上位3便で、全体の約95.2%を占めています。荷物の絶対量は、年々積み上がっているのです。
荷物を運ぶ側の事情も無視できません。2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用されました。これに伴い、改善基準告示(拘束時間等の基準)も適用が始まっています。いわゆる「物流の2024年問題」です。内閣官房の資料によると、何も対策を講じなければ2024年度に14%、2030年度には34%の輸送力不足が生じる可能性があります。運べる荷物の量に上限が見え始めているなかで、荷物の総量は増え続けている。これが、送料や運賃が上がりやすい構造の正体です。
荷主側の責任も重くなっています。改正物流効率化法は二段階で施行されました。2025年4月には、すべての荷主・物流事業者に対する努力義務が始まりました。積載効率の向上や荷待ち時間の短縮などが対象です。2026年4月には、取扱貨物重量が一定基準を超える荷主を対象とする「特定事業者制度」が施行されました。対象となる荷主には、中長期計画の作成・提出や、役員クラスの物流統括管理者(CLO)選任が義務づけられています。物流はもう、運送会社だけの課題ではありません。荷物を出す私たちEC事業者自身が、向き合うべきコストであり、責任にもなっています。
物流コストの4つの引き出しを、分けて見る
「物流費」とひとことでまとめてしまうと、どこから削ればよいのか判断できません。まずは性質の違う4つの費目に分けて、それぞれがどう膨らむのかを見ていきます。
| 費目 | 膨らみやすいパターン | 見直しの視点 |
|---|---|---|
| 配送費(送料) | 箱が実際の中身より一回り大きく、サイズ区分が一段上がってしまう | まず梱包サイズを見直す。区分が一段下がれば運賃は自動的に下がる |
| 資材費 | 箱の号数がバラバラで、緩衝材も現場判断まかせになっている | 号数と緩衝材の組み合わせを型として標準化し、まとめ発注でも下げる |
| 保管費 | 回転しない在庫が、賃料の発生するスペースを占有し続けている | 在庫の回転率を見て、場所を占有している「動かない在庫」を洗い出す |
| 人件費 | 資材を探す・迷う・やり直す時間が、作業の中に隠れている | 手順を標準化し、迷いなく作業できる状態をつくる |
この4つは、独立した費目ではなく互いに連動しています。梱包サイズを見直せば配送費が下がり、資材を標準化すれば人件費も下がる。逆に、送料交渉だけを単独で行っても、箱が大きいままでは効果は限定的です。だからこそ、次に述べる「着手する順番」が重要になります。
見直しの着手順:サイズダウン→資材標準化→作業時間短縮
4つの費目のうち、最初に手をつけるべきは配送費、それも運賃交渉ではなく「梱包サイズの適正化」です。宅配便の運賃は、重さだけでなく縦・横・高さの合計(サイズ区分)で段階的に決まる仕組みが一般的です。中身に対して箱が一回り大きいだけで区分が一段上がり、そのぶん送料も一段上がってしまいます。逆にいえば、箱をひとまわり小さくできれば、価格交渉をしなくても運賃そのものが下がるということです。着手コストが低く、効果がすぐ数字に表れるという点で、ここが最初の一手です。
次に取り組むのが資材の標準化です。箱の号数と緩衝材の組み合わせを、商品カテゴリーごとに「型」として決めてしまう。現場の判断に任せていると、迷った分だけ余分な資材を使い、迷った分だけ作業時間もかかります。型を決めておけば、資材の使用量も、発注のロットも、まとめやすくなります。段ボールリサイクル協議会によると、段ボール1平方メートルあたりの平均質量は2024年に594.4gまで下がりました。2004年比で7.3%の軽量化です(2025年公表)。業界全体が「軽く・小さく」を志向していることの裏づけです。
最後に着手するのが、作業時間(人件費)の短縮です。これを最後に置くのは、標準化されていない手順を効率化しようとしても、効果が長続きしないからです。資材の型が決まり、梱包サイズの基準が決まっていて初めて、作業手順を最短距離に整えられます。順番を逆にして人件費だけを削ろうとすると、探す・迷う・やり直すという無駄がそのまま残り、削減が一時的な我慢で終わってしまいます。
送料無料ラインは、値引きではなく損益設計
「送料無料」は、多くのECサイトが掲げる訴求です。しかし、これを単なる値引きサービスとして決めてしまうと危険です。送料は消えているわけではなく、どこかで自社が負担しています。売れれば売れるほど、送料負担だけが積み上がり利益を圧迫する、という逆転が起こり得るからです。
送料無料ラインを決めるということは、「この金額以上なら、送料を負担しても利益が残る」という損益の線を引く作業です。単価の低い商品を1点だけ買う注文にまで無条件で送料を負担すれば、その注文は赤字に近づきます。逆にラインを高く設定しすぎれば、無料化のメリットである「まとめ買いの動機づけ」が働きません。商品単価と利益率をふまえて、どの注文なら送料を吸収できるかを先に計算しておくことが必要です。
消費者庁は2023年12月19日、「送料無料」表示についての考え方を公表しました。法規制は行わない一方、次の考えを示しています。「送料として商品価格以外の追加負担を求めない」と表示する事業者には、説明責任があるという考えです。送料を誰がどう負担しているか、自分たちで説明できる状態にしておく必要がある、という趣旨です。2025年3月18日閣議決定の第5期消費者基本計画にも、この説明責任への理解を進める取り組みが明記され、今も続いています。「送料無料」を掲げるなら、それが誰の負担で成り立っているかを、私たちの側でも説明できるようにしておきたいところです。
見落としがちな隠れコスト:停滞在庫と再配達
送料・資材・人件費の見直しに気を取られていると、見えにくい形で積み上がっているコストを見落としがちです。代表的なものが、保管費のなかに潜む「停滞在庫」と、配送費のなかに潜む「再配達」です。
停滞在庫は、回転していないだけで、賃料の発生するスペースを静かに占有し続けます。とくに一点ものやロングテール商材を扱う事業者ほど、この見えないコストが積み上がりやすい傾向があります。棚卸しの際に金額だけでなく「回転していない期間」も見る習慣が、隠れた保管費を可視化する第一歩です。
再配達も、送料には表れない社会的コストです。国土交通省の令和8年4月調査によると、宅配便の再配達率は約7.6%まで下がりました。置き配・宅配ボックスなど「多様な受取方法」の利用率は約31.0%に達しています。これは事業者の努力だけでなく、消費者側の受け取り方の変化によるものです。それでも、正確な住所情報を促すこと、置き配や日時指定を選びやすい導線を用意することはできます。こうした工夫は、EC事業者の側からも再配達の発生を減らす助けになります。返品にともなう物流(リバースロジスティクス)の設計は、それ自体が一つの専門領域です。詳しくは、今後の記事で詳しく解説する予定です。
自社出荷か、外注(3PL)か:判断の軸
出荷件数が増えてくると、多くの事業者が一度は物流の外注を検討します。矢野経済研究所の調査(2025年7月公表)によると、3PLを含む物流15業種の総市場規模は2024年度に24兆6,405億円。2025年度は24兆7,650億円と予測されています。3PLは、今後もプラス成長が見込まれる業種の一つとされています。外注という選択肢は、年々身近になっているのです。
どちらが正解ということはなく、以下のような軸で自社に合う方を選ぶのが現実的です。
| 判断軸 | 自社出荷が向くケース | 外注(3PL)が向くケース |
|---|---|---|
| 商材の特性 | 一点ものなど個別の検品・状態確認が欠かせない | 規格が揃っており、標準的な梱包・出荷で完結する |
| 出荷量の変動 | 変動が小さく、自社の人員でならしやすい | 繁閑差が大きく、外部のリソースで吸収したい |
| コスト構造 | 固定費(人件費・設備)を抑え、変動費として持ちたい | 初期投資を抑え、成果に応じた変動費で払いたい |
| スピード対応 | 当日中の細かな例外対応を自分たちで判断したい | 標準化された手順の範囲でスピードと量を確保したい |
どちらを選ぶにしても、前提は変わりません。標準化されていない業務は、外注に出しても同じ品質では回りません。手順が言葉になっていれば、外部のパートナーにも正確に引き継げます。つまり、ここまで述べてきた資材・梱包の標準化は、自社出荷の質を上げる投資であると同時に、将来外注するときの準備にもなります。
私たちの現場と、これから
私たちラクフルの自社出荷の現場でも、同じような工夫を積み重ねています。本、CD、DVD、ゲーム、おもちゃ、家電、そしてアパレル。私たちが日々扱う商品は、大きさも重さもまちまちです。同じ「本」でも、文庫本と大型の写真集では収まる箱がまったく違います。商品カテゴリーごとに箱と緩衝材の組み合わせをあらかじめ決めておき、梱包サイズをできるだけ実寸に合わせる。この工夫を、現場のスタッフと一緒に、日々少しずつ積み重ねています。一点もののリユース品は規格がバラバラなため、完全な自動化にはまだ距離があります。それでも、標準化できる部分から手をつけることには、確かな意味があるはずです。
今後は、AIやデータ活用を深めながら、どの商品カテゴリーでどれだけ資材を使っているかを、感覚だけでなく数字でも見える形にしていくことを計画しています。どの注文が送料負担で利益を圧迫しているかも、同じように可視化していきたいところです。物流コストの見直しは、一度で終わる作業ではありません。荷物の量や運賃制度が変わるたびに、繰り返し向き合っていく仕事だと私たちは思っています。
まとめ:コストは、費目に分けて初めて削れる
物流コストは、送料・資材・保管・人件費という、性質の異なる4つの費目でできています。まとめて「高い」と感じているうちは、削れる場所は見えてきません。まずは梱包のサイズを見直すところから着手し、次に資材を標準化し、そのうえで作業時間を短縮する。この順番を守れば、値引き交渉に頼らなくてもコストは下がっていきます。
送料無料ラインは、値引きではなく損益設計です。停滞在庫や再配達といった、目に見えにくいコストにも目を配る必要があります。そのうえで、出荷量や商材の特性に応じて自社出荷と外注(発送代行・3PL)を選び分ける。どれも地味な取り組みですが、積み重ねた分だけ確実に利益として返ってくるはずです。物流コストの見直しは、仕入れや広告費まで含めたEC事業全体の利益構造を整える取り組みの一部でもあります。利益構造全体の見方は、別記事「ECの利益構造を分解する」(今後公開予定)で扱う予定です。物流だけでなく、EC運営全体の相談先をお探しの方は、ラクフルの事業紹介もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 物流コストを削減するとき、最初に手をつけるべきは何ですか?
A. 梱包サイズの適正化です。宅配便の運賃は、縦・横・高さの合計で段階的に決まる仕組みが一般的です。箱を一回り小さくするだけでサイズ区分が下がり、値引き交渉をしなくても送料そのものが下がります。着手コストが低く、効果もすぐに表れるため、最初の一手として適しています。
Q. 送料無料ラインはどうやって決めればいいですか?
A. 値引きではなく損益設計として決めます。商品単価と利益率をもとに、送料を負担しても利益が残る注文金額を先に計算し、そのうえでまとめ買いの動機づけとして機能する水準に調整します。曖昧なまま設定すると、売れるほど利益が薄くなることがあります。
Q. 自社出荷から外注(3PL)に切り替える目安はありますか?
A. 明確な数量の閾値はありませんが、出荷量の繁閑差が大きくなってきた、規格の揃った商材が中心になってきた、といった変化が判断材料になります。逆に一点ものなど個別の検品・状態確認が欠かせない商材は、自社出荷の比重を残す事業者が多いです。
Q. 梱包資材のコストは、具体的にどう減らせますか?
A. 商品カテゴリーごとに箱の号数と緩衝材の組み合わせを型として決め、まとめて発注することが基本です。資材の選び方や破損防止の工夫については、別記事「EC梱包の実務」(今後公開予定)で詳しく取り上げます。
Q. 送料の値上がり自体には、どう向き合えばいいですか?
A. 値上がりそのものを止めることはできません。ですが、梱包サイズの適正化でサイズ区分を下げる、資材を標準化して無駄を減らすといった自助努力で、値上げの影響を小さくすることはできます。値上げのたびに送料表だけを見直すのではなく、費目全体を定期的に点検する習慣が有効です。
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参考情報・出典
- 国土交通省「令和6年度 宅配便・メール便取扱実績について」(2025年8月公表)
- 我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議「物流革新緊急パッケージ」(2023年10月6日決定)
- 国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」(二段階施行:2025年4月=努力義務、2026年4月=特定事業者制度)
- 消費者庁「物流の『2024年問題』と『送料無料』表示について」(2023年12月19日公表)
- 国土交通省「宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%~前回調査(令和7年10月)に比べ1.1%増加~」(2026年7月公表)
- 矢野経済研究所 プレスリリース「物流15業種市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年7月16日公表)
- 段ボールリサイクル協議会「第4次自主行動計画と実績」(2025年公表・2024年度実績)
公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社(EC事業運営の現場より)
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