地域企業がインターネットで全国・世界とつながるための条件

「うちみたいな小さい店に、ネットなんて無理」——大阪・豊中で長く商いを続けてこられた方から、私たちラクフルは、この言葉を何度も、何度も聞いてきました。でも、本当にそうでしょうか。この記事は、地域の商店主さん・中小企業の経営者・自治体やメディアの方に向けて、地域企業がデジタルの力で全国・世界とつながるために、本当に必要な条件を、EC運営と「とよなかマルシェ」の現場を歩いてきた私たちが、飾らず等身大にお話しするものです。結論から言います——必要なのは、大きな投資でも、難しい技術でもありません。「小さく始めて、地域の強みを乗せて、続けていく」こと。ただそれだけ。ここから、はじまります。

地域企業がデジタルでつまずく、よくある3つの誤解

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」——なんだか難しそうな言葉です。でも、かみ砕いてしまえば、インターネットやデータの力を使って、商売のやり方や、お客様への届け方を、今よりちょっと良くしていくこと。たったそれだけのことなんです。ところが、この最初の一歩の手前で、足が止まってしまう地域の事業者さんが、本当に、本当に多い。なぜか。理由をたどっていくと、たいてい次の3つの誤解にたどり着きます。

ひとつめは「お金がかかる」という誤解。立派なシステムや、何百万もするサイト制作が必要だと思い込んでしまう。ふたつめは「難しくて、よくわからない」という誤解。専門用語やカタカナの多さに、始める前から諦めてしまう。みっつめは「うちの商品は特別だから、ネットには向かない」という誤解。手仕事や対面のあたたかさを大切にしてきたお店ほど、この壁の前で立ち止まってしまいます。

でも、私たちが現場で積み重ねてきた感覚では、この3つ、どれもちゃんと解きほぐせます。

よくある誤解 本当のところ ラクフルの解き方
① お金がかかる 大きな初期投資は必須ではない。無料〜低コストで始められる出店先や仕組みが、いまはたくさんある まず1商品・1モールから。売れ方を見ながら、少しずつ広げる
② 難しくてわからない 難しいのは「全部いっぺんにやろうとするから」。分ければ、一つひとつは手順に落とせる 専門用語をかみ砕き、日々の手順に翻訳して、隣で並走する
③ うちの商品は特別 むしろ「特別さ=地域の物語」こそ、ネットでは最大の武器になる 商品ではなく、背景・つくり手の想いを、一緒に言葉にしていく

大事なのは、この誤解を、あわてず一つずつ外していくこと。全部をいっぺんに変えなくていいんです。今日できる、小さな一歩から。それで十分。むしろ、それがいちばん強い。

小さく始めて、「続けられる形」にする

私たちがEC運営の現場でいちばん痛感してきたこと。それは、「はじめること」より「続けること」のほうが、ずっとずっと難しいという、身も蓋もない事実です。気合いを入れて立派なネットショップをつくっても、更新が止まり、写真が古び、在庫表示がずれ、いつのまにか誰も見ない場所になっていく——そんな光景を、私たちは業界の内側で、いやというほど見てきました。

だからこそ、地域企業のデジタル化で最初に設計すべきは、見た目の完成度ではありません。「無理なく続けられる形」、ただそれ一点です。

いきなり完璧を目指さない、という設計思想

続けられる形をつくるコツは、拍子抜けするほどシンプルです。大きな一歩を一回きりではなく、小さな一歩を何度も。ビジネスの世界では、この進め方を「小さく試して、学んで、直して、また試す」——アジャイルやリーン、あるいはOODAループ(見て・わかって・決めて・動く、を素早く回す)といった名前で呼びます。横文字が並ぶと身構えてしまいますが、中身はいたって素朴。完璧な計画が整うのを待たずに、まずやってみて、お客様の反応から学ぶ。それだけのことなんです。

私たちはこの考え方を、地域の事業者さん向けに、4つのステップへ翻訳しています。

【小さく始めて続ける DXステップ図】

 ① 棚卸し        ② 出店          ③ 改善          ④ 拡大
 ┌────────┐    ┌────────┐    ┌────────┐    ┌────────┐
 │ 何が   │    │ まず   │    │ 売れ方 │    │ 商品・ │
 │ 売れる │ →  │ 1商品  │ →  │ を見て │ →  │ モール │
 │ か     │    │ 1モール│    │ 直す   │    │ を増やす│
 │ 見直す │    │ で開始 │    │        │    │        │
 └────────┘    └────────┘    └────────┘    └────────┘
     ↑______________________________________________│
              売れ方から学び、また棚卸しへ(ぐるぐる回す)

ここでいちばんのポイントは、①→④で終わり、ではないこと。この輪を、ぐるぐる回し続ける。一周ごとに、ほんの少しずつ上手くなる。この「回せる形」さえ手に入れば、地域の小さなお店でも、着実に前へ進めます。派手さはありません。SNSでバズるような華やかさもない。でも、地に足のついた、ほんものの強さが、ここにあります。私たちは、そう信じています。

地域の強みは、そのままネットの武器になる

「うちの商品は特別だから、ネットには向かない」——冒頭の3つめの誤解を、ここでもう一度、正面からひっくり返します。

結論を言えば、まったくの逆です。地域だからこそ持っている「物語」や「顔の見える関係」は、そのままインターネットの、いちばん強い武器になります。 全国どこでも買える量産品ではなく、「この土地の、このつくり手が、この想いでつくった、この一品」。その背景こそが、画面の向こうにいるお客様の心を、静かに、確かに動かすのです。私たちがEC運営を通してずっと学んできたのは、モノそのものより、モノにまつわる想いのほうが、ずっと遠くまで届くという一点でした。

とよなかマルシェで、私たちが本当に学んだこと

このことを、私たちは机の上ではなく、現場のただ中で学びました。とよなかマルシェです。

2020年、コロナ禍。豊中の地元店舗が、大きな打撃を受けました。人の流れが止まり、対面でお客様を迎えてきたお店ほど、苦しい状況へ追い込まれていく。「何かできないか」——その、いてもたってもいられない想いから私たちが立ち上げたのが、地元店舗を支援するお取り寄せEC「とよなかマルシェ」でした。

【とよなかマルシェの仕組み】

  地元店舗              とよなかマルシェ            全国のお客様
 (豊中の             (お取り寄せECが            (画面の向こうの
  つくり手)            届ける役を担う)             一人ひとり)
 ┌────────┐          ┌──────────────┐          ┌────────┐
 │ 商品と │  出品    │ ネットで      │  お届け  │ 豊中の │
 │ 物語を │ ───────→ │ 販路をつくり  │ ───────→ │ 味・品 │
 │ 持つ店 │          │ 全国へつなぐ  │          │ に出会う│
 └────────┘          └──────────────┘          └────────┘
   店の外に出られない時も、ネットが「つながり」を絶やさなかった

このとき私たちが骨身にしみて痛感したのは、地域のお店が持つ商品力は、もともと十分に高かった、という事実です。足りていなかったのは、それを**「届ける手段」だけ**だった。味も、品質も、つくり手の誠実さも、すでにそこに、ちゃんとあった。欠けていたのは、それを画面の向こうのお客様へ運ぶ、一本の道だけ。その道さえ架ければ、豊中の小さなお店の魅力は、ちゃんと全国へ届いていく。とよなかマルシェは、それを私たちに、身をもって教えてくれました。

外の知見に学ぶ——「たった一人の困りごと」から始めるという発想

地域企業のデジタル化を考えるとき、私たちは世界のよく知られた知見からも、そっとヒントを借ります。ただし、学者や理論の名前を並べて、賢そうな顔をして終わり——にはしません。自分たちの現場につないで、はじめて意味がある。私たちは、そう考えているからです。

たとえば、あるマーケティングの考え方に「まず、たった一人の困りごとを、本気で解決することから始めよ」という発想があります。最初から万人に受ける大きなものを狙うより、身近な誰かの「これ、困ってるんだよね」を心から解いたほうが、めぐりめぐって、結果として多くの人に届いていく——という知見です。とよなかマルシェは、まさにこれでした。「全国展開の壮大なEC」を最初から狙ったわけではない。ただ、目の前の、豊中の、困っているお店を助けたかった。その一点から始めたことが、結果として、全国のお客様へとつながっていったのです。

もうひとつ。「なぜ、それをやるのか(Why)から語る」という考え方があります。何を売るか(What)よりも先に、なぜ自分たちがそれをするのかという想いから伝えたとき、人の心ははじめて動く——という知見です。そして地域のお店には、この「Why」が、もともと、たっぷりと詰まっている。先代から受け継いだ味、この土地への尽きない愛着、お客様の笑顔がただ見たいという素朴な願い。それを言葉にして画面に乗せることが、そのまま、いちばん強い発信になる。私たちは、本気でそう信じています。

外の理論は、あくまで背中をそっと押してくれる道具にすぎません。主役は、いつだって、地域の現場です。

ラクフルとしての仮説——地域企業のDXは、伴走者がいれば進む

ここまでを踏まえて、私たちラクフルがいま立てている仮説を、正直にお話しします。まだ「やり切った」と胸を張れる段階ではありません。だからこそ、これから汗をかいて検証し、実践していく仮説として、率直に書きます。

私たちの仮説は、こうです。

地域企業のデジタル化に、大きな予算や難しい技術は要りません。必要なのは、小さく始めて続けること。そして、隣で伴走する誰かです。

なぜ「伴走する誰か」なのか。ビジネスの世界では、商品を売って終わり、ではなく、お客様がちゃんと成果を出せるところまで並走する「カスタマーサクセス」という考え方が広がってきました。これを地域のデジタル化に置き換えると——ツールやサイトを渡して「はい、あとはご自由に」で終わりにするのではなく、「続けられているか」「ちゃんと売れているか」を一緒に見守り、つまずいたら一緒に立ち止まって直す存在こそが、いま地域にいちばん足りていないピースなのではないか。私たちは、そう考えています。

立派なシステムや便利なツールは、いまや地域にあふれています。本当に足りていないのは、その隣で「大丈夫、一緒にやりましょう」と言ってくれる、伴走者のほう。ならば、EC運営ととよなかマルシェで泥くさく現場を積み重ねてきた私たちこそ、その役を担えるのではないか。これが、いま私たちが本気で検証しようとしている、ど真ん中の仮説です。

今後ラクフルが実践していくこと

仮説を、絵に描いた餅で終わらせたくはありません。私たちがこれから実践していく具体的な打ち手を、正直に並べます。いずれも「これから」の挑戦であり、いま胸を張れる完成した実績ではないことも、あわせて、まっすぐお伝えします。

豊中発の販路づくりを、地域の仲間とともに

  • とよなかマルシェの知見を、より多くの地域事業者さんへ。コロナ禍で必死につかんだ「地元店舗をネットにつなぐ」ノウハウを、これからもっと多くの豊中・大阪の事業者さんと、惜しみなく分かち合っていきます。
  • 複数モールでの販路づくりを、隣で並走する。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Qoo10といった各モールは、それぞれに作法もクセも違います。私たちがEC運営で培ってきた経験を活かし、事業者さんに合ったモール選びと出店を、一緒に考えていく計画です。
  • 越境EC・海外への道を、地域の商品にも。日本製品の信頼性は、アジア市場で確かな強みになります。メーカー規制で流通できない商品もあるため、対応するモールへの出店を広げながら、豊中の商品を世界へ届ける可能性を、粘り強く探っていきます。
  • AI・データ活用で、「続けやすさ」を支える。地道な作業の効率化はテクノロジーに任せ、つくり手とお客様をつなぐ「人の温度」の部分に、私たちは集中する。その両立を目指して、仕組みづくりを進めていきます。
  • レンタルスペースを、挑戦の第一歩の場に。私たちの会議室・撮影スタジオ、そして個展・ポップアップへの拡大を通じて、地域の事業者さんが「まず小さく試せる」リアルの場も、コツコツ整えていきます。

ひとつずつ、地に足をつけて。大切な仲間である社員とともに、無理なく続けられるやり方で、着実に進めていきます。

まとめ:大阪・豊中から、地域の力を全国・世界へ

地域企業のデジタル化は、清水の舞台から飛び降りるような大きな決断でも、どこか遠い誰かの話でもありません。今日、目の前の商品を一つ、スマホで写真に撮ってみる。たったそれだけの小さな一歩から、道はちゃんとつながっていきます。

私たちがとよなかマルシェで見たのは、豊中の小さなお店が持つ確かな魅力と、それを届ける一本の道さえあれば、その魅力はちゃんと全国のお客様へ届いていくという、まぎれもない希望でした。子育てをしながら働く仲間も、地域で何十年と商いを続けてきたお店も、それぞれの持ち場で、誠実に積み上げてきたものが必ずある。その確かな力に、インターネットという翼を。

私たちは、日本一だとも、世界一だとも言いません。そんな言葉は要らない。ただ、大阪・豊中から、地域の力を全国・世界へつないでいく伴走者でありたい。インターネットの力で、人の生活を、ほんの少し明るくする。その素朴で、けれど本気の想いを胸に、これからも現場で一歩ずつ、あなたと一緒に、前へ進んでいきます。

楽しいを、もっと先へ。大阪・豊中から、世界と未来へ。

▶ デジタルでの販路づくりを考えている地域の事業者様は、事業紹介、またはお問い合わせへ、どうぞお気軽にご相談ください。あわせて「豊中から世界へ|私たちが越境ECに本気で取り組む理由」「私たちが売っているのは、商品ではなく『少し明るい明日』です。」もぜひご覧ください。

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