「もっと挑戦してほしい」と経営者や管理職が感じるとき、原因を社員の意欲に求めたくなります。でも、それは半分しか当たっていません。
挑戦が生まれない組織には、たいてい共通点があります。失敗した人が損をする仕組みになっている。小さな提案すら、承認までに時間がかかる。誰も口には出さないけれど、「余計なことをしない方が得だ」という空気が、いつの間にかできあがっている。これは個人の性格の問題ではありません。組織の設計の問題です。
私たちラクフルは、リユース・アパレルのEC事業から始まり、KIDSpo、レンタルスペース、とよなかマルシェ、製品開発、WEB制作へと事業を広げてきました。この歩みを支えてきたのは、経営陣の決断だけではなく、現場の一人ひとりの小さな挑戦だったと私たちは信じています。だからこそ、「挑戦する組織文化はどう作るのか」を、号令ではなく仕組みの話として、私たちなりに整理してみます。
もし今、あなたの職場でも「挑戦してほしいのに、なぜか提案が出てこない」ともどかしさを感じているなら、それは仕組みを見直すサインかもしれません。
この記事で分かること
- 挑戦する組織文化は、意欲や号令だけでなく、仕組みによって作られるという考え方
- 心理的安全性の正しい意味と、「仲良し組織」との違い
- 挑戦が生まれない組織で、一般的によく起きている3つの構造
- 挑戦を後押しする「小さく試せる権限」「失敗の総括ルール」「挑戦が評価される仕組み」
- 6つの事業への広がりの中で私たちが大切にしてきた文化と、これから深めたいこと
挑戦する組織は、号令では作れない
「もっと挑戦しよう」と朝礼で伝えても、翌日から社員が提案を持ってくるようにはなりません。挑戦は気合いの問題ではありません。行動した結果どうなるかという、組織の反応の問題だからです。
提案しても検討されない。挑戦して失敗したら評価が下がる。前例のないことをすると、まず「なぜ」と問い詰められる。こうした反応が積み重なると、社員は自然と学習します。「挑戦しない方が安全だ」と。これは怠慢ではありません。合理的な判断です。
逆に言えば、挑戦する組織文化とは、挑戦した人が損をしない仕組みのことです。挑戦しないことが、むしろ物足りないと感じられるくらいに、意図して設計された状態だと私たちは考えています。結論を先に言えば、鍵になるのは「小さく試せる権限」「失敗を責めない総括のルール」「挑戦そのものが評価される仕組み」の3つです。この3つが揃ったとき、挑戦は特別な誰かの美談ではなく、日常の当たり前になります。
心理的安全性とは何か、「仲良し組織」との違い
挑戦する組織を語るときによく出てくるのが、「心理的安全性」という言葉です。心理的安全性は、ハーバード・ビジネス・スクールの組織行動学者エイミー・C・エドモンドソンが1999年の論文で提示した概念です。「このチームでは、対人関係のリスクを取っても大丈夫だと信じられる状態」と定義されています。
誤解されやすいのですが、心理的安全性は「みんな仲良し」「批判し合わない」という意味ではありません。実は逆です。失敗を報告しても、疑問を口にしても、反対意見を言っても、人格や評価への攻撃にはつながらない。その安心感があるからこそ、率直な発言や挑戦的な提案が出やすくなる。それが本来の意味です。
この考え方が広く知られるきっかけの一つが、Googleが2012年から数年かけて実施した社内調査「プロジェクト・アリストテレス」です。生産性の高いチームに共通する条件を分析した結果、メンバーの学歴や性格の組み合わせよりも、心理的安全性の高さが最も強く成果に結びついていました。挑戦する組織文化の土台には、この安心感があるのだと私たちも受け止めています。
もう一つ押さえておきたいのは、心理的安全性が「発言しやすさ」だけの話ではないということです。発言できても、その発言をきっかけに小さく試す機会がなければ、安心感は挑戦につながりません。安心して声を上げられる土台と、実際に動ける仕組みは、セットで初めて意味を持ちます。
挑戦が生まれない組織で、よく起きている構造
では、挑戦が生まれにくい組織には、具体的にどんな構造があるのでしょうか。組織論として一般的によく指摘されるのが、次の3つです。事業の数を増やしてきた私たちも、規模が変わるたびに、こうした構造に陥っていないかを問い直してきました。
失敗した人が「一番損をする」構造
挑戦にはうまくいかない可能性がつきものです。それにもかかわらず、失敗した人だけが責任を負い、成功した施策の恩恵はチーム全体や会社に還元される。この非対称な構造があると、挑戦のリスクとリターンが個人にとって割に合わなくなります。
決裁までの距離が遠すぎる構造
小さな改善提案ですら、何段階もの承認を経なければ実行できない。時間がかかるうちに熱は冷め、「言っても仕方がない」という感覚が根づきます。挑戦の芽は、実行までの距離の長さで枯れてしまうことが少なくありません。
挑戦そのものが評価の対象になっていない構造
評価の物差しが「ミスをしなかったか」だけに偏っていると、挑戦しない人ほど評価が安定します。挑戦して得た学びや、失敗から次に活かした改善が評価に反映されなければ、挑戦する動機はどうしても弱くなります。
この3つはどれも、個人の資質ではなく仕組みの話です。だからこそ、仕組みを変えれば挑戦は増やせると私たちは考えています。
挑戦を後押しする3つの設計
私たちが大切にしたいと考えているのは、次の3つの設計です。どれか一つだけでは機能しません。3つが揃って、初めて意味を持ちます。権限だけあっても失敗が裁かれるなら人は動きません。総括のルールだけあっても評価が挑戦を無視するなら報われません。3つは互いを支え合う関係にあります。6つの事業を並行して運営してきた経験から、私たちはそう実感しています。
1. 小さく試せる権限を、現場に近いところへ
大きな投資判断はともかく、日々の業務改善や小さな施策の試行にまで、経営層の決裁を待つ必要はないはずです。影響範囲が限定的で、後から元に戻せる挑戦については、現場に近い立場でも「まず小さく試してみる」判断ができる。そうした権限の持たせ方が、挑戦の初速を大きく左右します。私たちは33名(パート含む)という規模だからこそ、現場と決裁者の距離を近く保てていると感じています。この距離の近さを、仕組みとして手放さないことが大切だと考えています。
2. 失敗を裁くのではなく、総括するルール
挑戦がうまくいかなかったとき、大切なのは「誰の責任か」を探すことではありません。「何が起きて、次にどう活かすか」を整理することです。この違いは小さく見えて、組織の空気を大きく変えます。失敗を個人の問題として裁く文化では、人は失敗を隠すようになります。失敗を仕組みの学びとして総括する文化では、失敗はむしろ早めに共有されるようになります。6つの事業を並行して運営していると、ある事業でうまくいかなかった試みが、別の事業のヒントになることも少なくありません。総括を仕組みにしておくことは、一つの事業だけでなく会社全体の学びを増やすことにもつながります。
3. 挑戦した事実そのものを評価に組み込む
結果だけでなく、挑戦したこと自体、そして失敗から何を学び次にどう変えたかを評価の物差しに含める。これができると、「挑戦しない方が評価が安定する」という力学が弱まり、挑戦と評価の向きがそろいます。事業ごとに扱う商材も業務もまったく違う私たちだからこそ、”結果が出たかどうか”だけでは測れない挑戦がたくさんあることを、日々実感しています。
私たちが大切にしてきたこと、これから深めたいこと
私たちラクフルには、7つのバリューがあります。楽しさ・利潤・最先端・好奇心・再現性・誠実性・持続性。そしてクレドには、「常に新しいことへ挑戦し続ける」という言葉を掲げています。2015年7月の設立から、国内ECのリユース・アパレル事業を軸に、KIDSpo、レンタルスペース、とよなかマルシェ、製品開発によるTABI Sneakers、WEB制作へと事業を広げてきました。この歩みは、経営陣の決断だけで進んできたわけではないと、私たちは考えています。現場から生まれた小さな提案や試行の積み重ねが、その一部を支えてきたはずだと、私たちは信じています。
もちろん、私たちの仕組みも完成形ではありません。33名(パート含む)という規模だからこそ、承認の距離を近く保てている部分があります。一方で、事業が増えるほど、権限の持たせ方や失敗の総括の仕方は、その都度見直しが必要になります。国内ECのリユース・アパレル1本だった頃と、6つの事業を並行運営する今とでは、決裁を任せられる範囲も、失敗の影響範囲も違います。規模が変わるたびに設計を問い直す。それ自体を、私たちは当たり前の作業だと捉えています。
越境EC本格化や自社PB、ヴィーガンコスメ、AI・データ活用の深化といったこれからの挑戦を、私たちは計画しています。こうした新しい挑戦を進める中でも、「挑戦した人が損をしない仕組み」をどう保ち続けるかは、私たちにとって現在進行形の課題です。
この歩みの詳しい中身は3年後のラクフルへ|“楽しい”を世界と未来へ広げる5つの挑戦で、「EC会社」という肩書きにとどまらない事業の広がりは「EC会社」を、卒業します。でご紹介しています。挑戦の中身そのものは、こうした記事に譲り、本稿では挑戦を支える組織側の設計に絞ってお伝えしています。
仕組み化との関係、そしてこれからの展望
挑戦する文化と、私たちがもう一つのバリューとして掲げる「再現性」は、一見すると相反するように見えるかもしれません。決められた手順を守ることと、前例のない挑戦をすることは、方向が逆に思えるからです。
けれど私たちは、この2つは補い合う関係だと考えています。定型業務を仕組み化して属人化を減らすほど、空いた時間と余力を新しい挑戦に振り向けられます。仕組み化の考え方は『たまたま売れた』を、なくす。|ラクフルのEC運営を支える再現性の話で詳しくお話ししていますが、根っこにあるのは同じ発想です。当たり前の仕事は仕組みに任せ、人にしかできない挑戦に力を注ぐ。
権限の持たせ方や評価制度の細部については、組織づくり全体を扱う記事で改めて体系的に整理する予定です。また、挑戦がうまくいかなかった経験から私たちが何を学んできたかについても、今後の記事で詳しくお話ししていくつもりです。今はまだ、その歩みの途中にあります。
まとめ:挑戦は、才能ではなく設計の結果
挑戦する社員がいる会社と、いない会社の違いは、社員の意欲の差ではありません。挑戦した人が損をしない仕組みがあるかどうかの差です。小さく試せる権限、失敗を裁かず総括するルール、挑戦そのものを評価に組み込む仕組み。この3つが揃ったとき、挑戦は一部の人の勇気に頼るものではありません。組織の当たり前になります。
私たちラクフルも、6つの事業を並行して運営する中で、この設計を完成させたわけではありません。事業が広がるたびに、問い直し続けている途中です。それでも、「常に新しいことへ挑戦し続ける」というクレドを掲げる以上、挑戦する仲間が損をしない組織であり続けたいと考えています。挑戦を特別な誰かの物語にせず、日々の仕事の中の当たり前にしていく。その積み重ねの先にしか、次の事業も、次の挑戦も生まれないと私たちは考えています。
挑戦した仲間が、失敗も含めて笑顔で次の一歩を話せる。そんな組織文化に、私たちはこれからも近づいていきたいと思っています。立ち止まらずに、仲間と一緒に挑戦し続ける先に、次の彩りがきっと待っています!
よくある質問
Q. 心理的安全性を高めれば、それだけで挑戦する組織になりますか?
A. 心理的安全性は土台として欠かせませんが、それだけでは不十分です。小さく試せる権限や、挑戦を評価に組み込む仕組みが伴って初めて、安心感が実際の挑戦につながります。
Q. 心理的安全性が高い職場は、なれ合いにならないのですか?
A. なりません。心理的安全性は「批判し合わない」ことではなく、「率直な意見や失敗の報告をしても人格攻撃を受けない」という安心感を指します。実際には、率直な発言がしやすくなる状態です。
Q. 小さな会社でも、挑戦する組織文化は作れますか?
A. 小さな会社の方が作りやすい面があると私たちは考えています。決裁の距離が近く、現場の声が経営層に届きやすいからです。私たちも33名(パート含む)という規模の中で、この距離の近さを大切にしています。
Q. 失敗を責めない組織にすると、社員の緊張感がなくなりませんか?
A. 目的は緊張感をなくすことではなく、失敗を隠さずに共有できる状態を作ることです。何が起きたかを正直に総括できる組織の方が、同じ失敗を繰り返しにくく、結果として質の高い挑戦につながると考えています。
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参考情報・出典
公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社
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