「うちも会社ブログを始めたほうがいいのだろうか」。そう思いながら、何を書けばいいか分からず手が止まっている経営者や広報担当は、少なくないと思います。広告費をかけずに集客や採用につながる発信ができるなら、始めない手はありません。けれど、いざ書こうとすると筆が止まる。数本書いて満足し、更新が止まる。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
私たちラクフルは、大阪・豊中でEC・リユース事業などを営む会社です。社員は33名(2026年6月現在・パート・アルバイト含む)です。2026年6月に自社サイトをリニューアルし、以来この会社サイト自体を「専門メディア」として育てる挑戦を進めています。今まさに手を動かしながら、何が続き、何でつまずくのかを、仲間と一緒に日々学んでいる最中です。
この記事では、その現在進行形の実践をふまえながら、中小企業がオウンドメディア(自社の媒体を使った発信)をどう始め、続けるかを整理します。テーマの絞り方・書き方の基準・更新体制という3つの観点から見ていきます。大きな予算も専門部署もない会社でも、始められる形を一緒に探っていきましょう。
この記事で分かること
- オウンドメディアが今の中小企業にとって意味を持つ理由
- 広告・SNSとの役割の違いと、コンテンツマーケティング・SEOとの関係
- 「始めたのに続かない」会社に共通するつまずき方(私たち自身の失敗も含む)
- テーマを絞る・事実で書く・更新を止めないという3つの実践ポイント
- 社員33名の私たちが、今どこまで取り組めているか
結論:オウンドメディアは「絞る・事実で書く・続ける」で決まる
先に結論をお伝えします。オウンドメディアは、広告のように出稿を止めれば効果もゼロに戻るものではありません。書いた記事は資産として積み上がり、検索や紹介を通じて後からじわじわ効いてきます。ただしそれは、続けられた場合に限った話です。
続けるための条件は、私たちの実感では3つしかありません。専門分野を絞ること。事実に基づいて書くこと。更新を止めないこと。この3つがそろえば、社員33名規模の会社でも十分に成立します。逆にどれか一つが欠けても、更新は途中で止まりやすくなります。
なぜ今、会社サイトでの発信が効くのか
まず、なぜ会社サイトでの発信に意味があるのかを確認します。総務省は「令和6年通信利用動向調査」を2025年5月に公表しました(令和6年8月末時点調査)。それによると、自社のホームページを開設している企業の割合は93.2%でした。前年からは0.2ポイントの上昇です。「サイトを持っていること」自体は、もはや大半の会社にとって当たり前の状態だと言えます。今、差がつくのは、そのサイトに「読む理由のあるコンテンツ」があるかどうか、という点です。
取引先や求職者が会社を選ぶ場面でも、同じ変化が起きています。株式会社wib(2026年6月にシンクパートナーズ株式会社へ社名変更)が、BtoB企業の決裁者500人を対象に調査を行いました。2024年2月の実施で、同年4月に結果を公表しています。それによると、84%の決裁者が、営業担当者と会話する前の段階で、購買を決定づける情報にすでに触れていたと回答しています。また、グリーゼ社も購入関与者441人を対象に調査しています(2023年6〜7月実施・同年8月公表)。BtoB商品の購入プロセスで「営業担当者とやり取りしない」と答えた人は25.2%でした。これは2021年の前回調査からほぼ倍増した数字です。
営業担当が声をかける前に、相手はもう会社の姿をウェブで見にきています。グリーゼ社の調査が示すように、営業と話さずに判断が進む傾向は今後も強まりそうです。会社サイトに載っているのが会社概要と実績だけでは、相手の疑問に答えられないまま判断されてしまいます。「どんな考え方で仕事をしている会社か」「現場は何を大事にしているか」を言葉にして置いておくこと。それが、営業や採用の面談よりも先に、相手との最初の対話を担うようになっています。
オウンドメディアとは何か:広告・SNSとの違い
オウンドメディア(owned media)とは、企業が自社で保有し、内容をコントロールできる情報発信の媒体を指します。会社サイト内のブログやコラムが代表例です。こうした自社メディアを通じた発信は、「コンテンツマーケティング」という手法の中心でもあります。広告費に頼らず、検索エンジン最適化(SEO。検索結果で見つけてもらいやすくする工夫)を通じて、中長期的に読者と出会うための考え方です。広告費で表示枠を「借りる」広告(paid media)とは対比される言葉です。他者の評価を通じて広まる口コミ・報道(earned media)とも対比されます。
3つの媒体は、対立するものではなく役割が違います。整理すると、次のようになります。
| 媒体 | 特徴 | 向いていること |
|---|---|---|
| 広告(paid) | 費用を払った分、即座に届く。止めれば効果も止まる | 短期的な集客・新商品の告知 |
| SNS | 拡散力があるが、情報は流れて埋もれやすい | 日々の近況・ファンとの接点づくり |
| オウンドメディア | 時間はかかるが、公開した記事は資産として残る | 検索経由の中長期的な集客・信頼の証明(コンテンツマーケティング) |
SNSの投稿は、タイムラインを流れていく「今」の発信です。一方でオウンドメディアの記事は、検索エンジンや会話の中で何度も参照される「積み上がる」発信です。どちらか一方を選ぶ必要はありません。私たちも、日々の近況はSNSに、じっくり語りたいことは会社サイトに、と役割を分けたいと考えています。大事なのは、オウンドメディアにはSNSにはない「積み上がる」という特性がある、と理解しておくことです。
「始めたのに続かない」典型パターン
会社ブログやオウンドメディアは、始めること自体はそれほど難しくありません。難しいのは続けることです。私たちが実際につまずいた経験も含めて、「よくあるつまずき方」を3つ挙げます。
パターン1:範囲が広すぎて、ネタが逆に尽きる
「会社のことなら何でも書こう」と決めると、一見自由に見えて、実は一番苦しくなります。私たちも最初は「EC運営の話なら何でも書けるはず」と、候補テーマを50個ほど書き出しました。いざ書く段になると、その多くがどこかで読んだような一般論の域を出ず、実際に書き切れたのは数本だけでした。テーマが無限にあるように見えるほど、「今週は何を書くか」を毎回ゼロから考えることになります。範囲が広いほど、企画はかえって難しくなるのだと実感しました。
パターン2:中身のない一般論に流れる
更新を優先するあまり、どこかで読んだような一般論や、当たり障りのない精神論で埋めてしまうことがあります。それでは検索してきた読者の疑問には答えられず、「この会社にしか書けない記事」にもなりません。結果として読まれず、書く側の好奇心もモチベーションも下がっていきます。
パターン3:担当者一人に負担が集中する
「広報担当が一人で書く」体制のまま始めると、その人が忙しくなった瞬間に更新が止まります。私たちの場合も、最初はサイト運用の担当1名にネタ出しから校正まで任せていました。他の業務が立て込む月は、更新が3週間ほど止まったこともあります。会社としての発信なのに、一人の余力に依存してしまう。これがオウンドメディアが息切れする、最も多いパターンです。
この3つに共通するのは、始める前に「範囲」「基準」「体制」を決めていないことです。この3つをあらかじめ決めておけば、続けられる可能性はぐっと上がります。次の章から、具体的な決め方を見ていきます。
始め方①:テーマを絞る
最初にやるべきは、書くテーマの範囲を意図的に狭めることです。会社の事業やお客様の疑問と地続きの、2〜3個の専門分野に絞り込みます。範囲を狭めるほど、逆に「その分野の専門家」として認識されやすくなり、次に何を書くかも決めやすくなります。
絞り込みの目安になるのが、日頃お客様や取引先、求職者から実際に聞かれる質問です。「その質問に答える記事を書く」と考えれば、ネタ切れの不安はかなり減ります。私たちの場合であれば、EC運営の実務、リユース・循環型社会、地域と組織づくりといった領域に絞っています。いずれも、自分たちが日々の仕事で答えている領域です。範囲を決めることは、書ける範囲を狭めることではなく、書き続けられる範囲を定めることだと捉えるとよいと思います。
始め方②:事実で書く仕組みをつくる
次に大切なのが、書く内容の品質基準です。オウンドメディアの信頼は、更新頻度だけでは積み上がりません。「この会社の記事は事実に基づいている」という積み重ねが、読者の信頼になります。
具体的には、次の2点をルール化しておくことをおすすめします。第一に、統計や制度に触れるときは、必ず出典(官公庁や業界団体などの一次情報)を確認し、対象年度と公表時期を明記すること。古いデータをあたかも最新のように書かない、というだけでも記事の信頼性は大きく変わります。第二に、自社の実績や数字は、確認できないものを創作しないこと。まだ実現していない取り組みは「計画している」「これから取り組む」と正直に書けば十分です。誇張よりも、等身大の言葉のほうが結局は信頼されます。
この2点は、頭で分かっていても実務ではつまずきます。私たちも、公開直前になって「この数字は何年の調査だったか」を思い出せず、出典を探し直すだけで半日を使った記事があります。それ以来、統計を使う記事では出典URLと公表年月を執筆メモに残す運用に変えました。この2点をチェックリスト化しておけば、担当者が変わっても書く記事の質がぶれません。品質基準は、書く人を縛るルールというより、書く人を守るルールでもあります。「事実さえ押さえていれば大丈夫」という土台があるからこそ、安心して自分の言葉で書けるようになるからです。
始め方③:更新を止めない体制と、私たちの現在地
最後の条件は、更新を止めない体制です。一人に負担を集中させないためには、ネタ出し・執筆・確認を仲間で分業する仕組みが有効です。全員が均等に書く必要はありません。「ネタを出す人」「現場の話を語れる人」「文章に整える人」のように役割を分けるだけでも構いません。それだけで、一人の忙しさが即座に更新停止につながる事態は避けられます。
また、月に何本、どのテーマで、といった大まかな計画を先に立てておくと、「今週は何を書こう」から始めずに済みます。効果が出るまでには一定の時間がかかることも、始める前に社内で共有しておくべき前提です。広告のように、出した翌日から反応が出るものではありません。記事が積み上がり、検索や紹介での接点が増えていくまでには時間がかかります。この時間差を織り込んでおかないと、成果が出る前に更新が止まってしまいます。
私たちラクフル自身も、この体制づくりの途上にあります。2026年6月の自社サイトリニューアルを機に、会社サイトを「読まれる場所」にする挑戦を始めました。今は、ネタ出しを現場のメンバーが、執筆をサイト運用の担当が、事実確認と最終チェックを広報が担う形で分担しています。まだ完成した仕組みがあるわけではありません。それでも、テーマを絞ること、事実で書くこと、更新体制を分業することの3つを、仲間と一緒に自分たちのサイトで検証していきます。本気で実践していくつもりです。この過程で得た手応えや反省点は、今後もこの記事の続報という形で共有していきたいと考えています。
まとめ:資産になる発信は、絞ることから始まる
会社サイトの開設率は、もう9割を超えました。取引先や求職者は、営業担当と話す前に情報を集める時代になっています。だからこそ、会社サイトに何を置いておくかが、以前より重い意味を持つようになりました。オウンドメディアは、広告のように即効性はありませんが、書いた記事が資産として積み上がり、後から効いてくる発信の形です。
始め方は、シンプルです。専門分野を絞ること。事実に基づいて書くこと。更新を止めない体制を用意すること。この3つがそろえば、大きな予算や専門部署がなくても、中小企業のオウンドメディアは十分に成立します。私たちも、この会社サイトそのものを実践の場として、立ち止まらずに一本ずつ記事を積み上げていきます。サイトの構成や運用体制の設計から相談したいという方は、私たちのWEB制作事業でもご相談を受け付けています。お問い合わせからお気軽にどうぞ。
よくある質問
Q. オウンドメディアと会社ブログは何が違うのですか?
A. 明確な線引きはありません。会社ブログは近況報告やお知らせを含む広い言葉として使われがちです。オウンドメディアは、自社で保有・運営するメディア全般を指す、より広い概念です。本記事で扱うのは「専門分野を絞って事実に基づき書く記事」です。会社ブログの中でも、オウンドメディア的な運用を意図したものと考えていただいて構いません。
Q. オウンドメディアとコンテンツマーケティングは同じものですか?
A. ほぼ重なる概念です。コンテンツマーケティングは「価値ある情報発信で読者との関係を築く手法」を指す言葉です。オウンドメディアは、その発信を行う「場」を指します。中小企業がSEO経由で新しい取引先や求職者と出会う手段として、この2つはセットで語られることが多いです。
Q. 何人くらいの体制があれば始められますか?
A. 最初は1〜2人でも始められます。大切なのは人数の多さより、ネタ出し・執筆・確認という役割を分けておくことです。一人に全工程が集中する体制だと、その人が忙しくなった瞬間に更新が止まりやすくなります。
Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?
A. 記事数や分野によって差がありますが、広告のような即効性はありません。記事が積み上がるほど検索や紹介での接点が増えていく、中長期の取り組みだと捉えておくのが実態に近いです。始める前に社内でこの時間差を共有しておくと、成果が出る前に更新が止まる事態を避けやすくなります。
Q. AI検索(生成AIによる検索)が広がる中でも、オウンドメディアは意味がありますか?
A. あると考えています。AI検索が参照する情報も、元をたどれば一次情報や専門性のあるサイトの記事です。AI検索時代に向けた個別の対策については、今後の記事で詳しく解説する予定です。
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参考情報・出典
- 総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」(2025年5月公表・令和6年8月末調査)
- 株式会社wib(現・シンクパートナーズ株式会社)「BtoBの購買プロセスにおいて、84%の決裁者が営業担当との接触前に購買を決定づける情報にリーチ」(2024年4月2日公表・2024年2月調査)
- Web担当者Forum「BtoB製品の購入プロセス、25.2%が『営業担当者とやり取りしない』の実態【グリーゼ調べ】」(2023年8月22日公開・2023年6〜7月調査)
公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社
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