求人票を出しても応募が来ない。面接に来てもらえても、内定辞退で終わる。地方・郊外で採用を担当していると、こうした壁に何度もぶつかります。
大手企業と同じ条件を並べようとするほど、給与も待遇も知名度も見劣りします。そう感じている経営者や人事担当の方は、少なくないはずです。ですが採用で本当に効くのは、「大手と同じ土俵に立つこと」ではありません。
この記事では、地方・郊外の中小企業が知名度に頼らず選ばれるための考え方を整理します。あわせて、明日から着手できる具体的な取り組みも、実務の視点から紹介します。
この記事で分かること
- 地方・郊外の中小企業の採用が難しくなっている背景
- 大手と同じ条件で戦うことが、なぜ不利になりやすいか
- 知名度の代わりに揃えたい『語れる材料』という考え方
- 語れる材料を集める4つの視点と、発信までの手順
- 採用ブランディングを一過性で終わらせないコツ
先に、この記事の結論をお伝えします。地方・郊外の採用は、待遇の背伸びだけでは大手に勝てません。認定・働き方・理念など、事実として語れる材料を揃えて発信し続ける中小企業が、少数でも自社に合う人に深く選ばれます。
地方・郊外の中小企業は、なぜ採用に苦戦するのか
まず、なぜ今これほど採用が厳しいのかを確認しておきます。感覚論ではなく、企業側の実感を示すデータがあります。
帝国データバンクが2026年4月に実施した調査によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は50.6%でした。4月としては4年連続で5割を超えています。特に運輸・倉庫や建設、メンテナンス・警備・検査など、現場を人の手で支える業種で不足感が強い傾向が続いています。
この人手不足は、都市部より地方・郊外で深刻になりやすいと一般的にいわれています。若年層の進学や就職を機にした都市部への流出が続き、同じ地域内で採用を奪い合う構図になりやすいためです。断定できる全国比較データがあるわけではありません。それでも、地方・郊外の中小企業には「そもそも応募者の母数が少ない」と感じている経営者が少なくありません。
加えて、求職者側の情報収集の仕方も変わりました。今の求職者は、求人票の条件欄だけでなく、企業の公式サイトやSNS、口コミサイトを横断的に見ています。そのうえで「この会社は信頼できるか」を判断します。情報を出していない会社は、単に見つけてもらえないだけではありません。「発信していない=何か隠しているのでは」と受け取られることさえあります。
大手と同じ土俵に乗ると、なぜ勝てないのか
応募が集まらないとき、多くの会社がまず考えるのは「給与を上げる」「福利厚生を手厚くする」という条件面の強化です。もちろん最低限の待遇を整えることは欠かせません。ですが、それだけを武器にすると、たいてい苦しい戦いになります。
資金力の勝負では、大手が有利になりやすい
給与水準や広告費、採用イベントへの出展料。「お金をかけられるかどうか」の勝負では、資本力のある大手や都市部の企業に分があります。地方・郊外の中小企業が同じ土俵で張り合おうとすると、限られた採用予算をすり減らすだけで終わりがちです。
知名度は、あとから追いつきにくい
「知っている会社」というだけで、応募のハードルは大きく下がります。逆にいえば、知名度で見劣りする会社は「知らない会社=リスク」という印象を持たれやすいということです。知名度は一朝一夕には積み上がりません。広告費を積んだからといって、すぐに追いつけるものでもありません。
だから、比べるモノサシを変える
ここで大切なのは、「知名度で劣るなら、知名度以外のモノサシで選ばれよう」と発想を切り替えることです。応募者が本当に知りたいのは、「この会社で働いたら、自分の毎日はどうなるか」という具体像です。それは知名度がなくても、事実を積み重ねれば語れます。
知名度がなくても選ばれる、『語れる会社』という発想
ここでいったん、私たちの考えを言葉にしておきます。地方の採用で待遇の背伸びをしても、資金力のある大手には敵いません。ただ、認定・働き方・理念という事実を積み重ねて発信し続ければ、話は変わります。少数であっても、自社に合う人から深く選ばれる会社になれるはずです。わくわくしながら試行錯誤する価値のある挑戦だと、私たちは考えています。
広く浅く知ってもらうための戦い方ではなく、事実を積み重ねて、狭くても深く信頼してもらう戦い方へ。それが、地方・郊外の中小企業にとって現実的な採用戦略だと考えています。
「語れる会社」とは、特別な物語を持つ会社という意味ではありません。たとえば働き方の工夫や、取得している認定、日々の仕事の中身、経営者や社員の言葉。すでに社内にある事実を、応募者に届く形に翻訳して発信できている会社のことです。多くの中小企業は、語れる材料を持っているのに、それを言葉にして外へ出せていないだけなのです。
中小企業が語れる材料をどう揃えるか、4つの視点
では、具体的に何を揃え、何を語ればよいのでしょうか。私たちは、語れる材料を大きく4つの視点で捉えることをおすすめしています。
| 視点 | 中身の例 | 効く相手 |
|---|---|---|
| 制度・認定 | 公的機関や第三者機関による認定、社内制度の実際の利用実績 | 「制度はあっても使われていないのでは」と疑う慎重層 |
| 働き方の実際 | 始業・終業の様子、繁忙期の対応、休暇の取りやすさ | 働き方のリアルを知りたい実務志向の層 |
| 仕事の中身 | 一日の流れ、任される業務範囲、育成の進め方 | 入社後のギャップを避けたい未経験・若手層 |
| 理念・姿勢 | 経営者や社員自身の言葉での価値観・目指す方向 | 働く意味や共感を重視する層 |
制度・認定は「取って終わり」にしない
働きやすさを客観的に示す手段のひとつが、第三者機関による認定です。認定そのものが採用の決め手になるというより、「外部の目でも一定の基準を満たしている会社だ」という安心材料として働きます。ただし、認定を取っただけで満足してしまう会社も少なくありません。大切なのは、認定の先にある「日々どう運用しているか」まで語ることです。私たちが取得しているホワイト企業認定(豊中)も同じです。取得後にどう向き合っているかまで発信して、初めて採用の材料になると考えています。
働き方の実際は、場面で語る
「アットホームな職場です」「風通しの良い社風です」。こうした言葉は、ほとんどの求人票で見かける表現で、応募者の記憶には残りにくくなっています。それよりも「繁忙期はどう乗り切っているか」「急な家庭の事情があったとき、実際どう対応しているか」。具体的な場面を語るほうが、はるかに信頼されます。抽象的な形容詞を、リアルな場面の描写に置き換えることが、語れる会社への第一歩です。
仕事の中身は、入社後のギャップを防ぐ
特に未経験者や若手を採用したい会社にとって、これは重要な情報です。「実際どんな仕事を、どんな順番で任されるのか」を示すことは、応募のハードルを下げます。同時に、入社後の早期離職を防ぐ効果もあります。求人票に書ける情報量には限りがあります。だからこそ、自社サイトやブログで一日の流れや育成の進め方を描く価値があります。
理念・姿勢は、誰の言葉で語るかが要
会社としての価値観や目指す方向は、採用ページの決まり文句としてはあまり伝わりません。経営者自身や現場の社員自身の言葉で語られたときに、初めて説得力を持ちます。同じ「仲間を大切にします」という一文でも、誰がどんな場面でそれを語っているかによって、伝わり方はまったく変わります。私たちが公開している『子どものお迎えがあるので』と、堂々と言える会社へ。という記事も、制度の説明だけでなく、働く一人ひとりの言葉を大切にしてまとめました。
語った材料を、どう発信し続けるか
材料を揃えても、応募者の目に触れなければ意味がありません。ここでは、発信の実務を見ていきます。
会社サイトを「読まれる場所」に育てる
採用ページを条件の羅列だけで終わらせず、コラムや記事の形で会社の姿勢や現場を伝える。そんな発信を積み重ねる会社が増えています。私たちラクフルも2026年6月に自社サイトを刷新し、事業の中身や働き方を記事として発信する取り組みを強化しました。一度に大きく変えるより、小さな発信を積み重ねる発想です。検索や紹介から、少しずつ会社を知ってもらう経路を増やしていきます。
SNSは「更新頻度」より「一貫したトーン」
SNSでの発信は、頻繁に投稿することより、誰が見ても同じ会社だと分かる一貫したトーンで続けることのほうが重要です。日々の仕事の様子、社員の声、会社としての姿勢。飾らない言葉で継続的に発信することが、遠回りのようで、結果的に一番信頼を積み上げます。
書ける人がいなくても始められる
発信というと、専門のライターや広報担当が必要だと身構えてしまいがちです。ですが最初の一歩は、経営者や現場の担当者が、自分の言葉で日々の出来事をメモすることから始められます。整った文章である必要はありません。事実と、その場で感じたことを書き留めておくことが、あとで発信の材料になります。
発信は一度で終わらせない
採用ブランディングで多くの会社がつまずくのは、求人が埋まった途端に発信を止めてしまうことです。発信は、今すぐの応募者だけに向けたものではありません。数年後に転職や就職を考えるかもしれない、潜在層に向けた長い時間軸の投資です。採用が落ち着いている時期こそ、発信を止めない体力が問われます。
豊中で採用してきた、私たちの実例
私たちラクフルは、大阪・豊中を拠点にする会社です。社員33名(パート・アルバイト含む)で、EC・リユース・レンタルスペースなど複数の事業を運営しています。拠点は阪急豊中駅から徒歩5分ですが、都心部と比べれば知名度で選ばれる会社ではありません。大阪の都市圏に近い郊外という立ち位置は、多くの地方・郊外の中小企業と同じ悩みを共有していると感じています。
それでも、2021年にホワイト企業認定プラチナという第三者機関からの認定を取得し、働きやすさへの取り組みを続けてきました。認定を取って終わりにするのではなく、その中身を記事として発信し、応募者や取引先に事実として伝える努力をしています。面接の場でも、条件面だけでなく「入社したらどんな一日になるか」を、私たち自身の言葉で伝えるようにしています。求人票には書ききれない空気感を、少しでも持ち帰ってもらえたらと思っています。
2026年6月のサイトリニューアルも、そうした発信をより届きやすくするための取り組みのひとつです。日々の仕事の様子は、別の記事で詳しく紹介する予定です。タイトルは「EC企業の仕事内容|社員33名の小さな会社の一日とリアル」(今後公開予定)です。
私たちの取り組みが完成形だとは思っていません。それでも、知名度ではなく事実を積み重ねる戦い方には、参考になる部分があるはずです。同じように地方・郊外で採用に悩む会社に、届けばと考えています。私たちの採用情報でも、同じ考え方で会社を紹介しています。
まとめ:少数の『合う人』に、深く選ばれる会社へ
地方・郊外の中小企業の採用は、大手と同じ条件を並べる戦いでは分が悪いのが現実です。だからこそ、知名度で勝負するのをやめる発想に切り替えます。「語れる事実の厚み」で選んでもらうことが、現実的で効果のある戦略になります。
制度・認定、働き方の実際、仕事の中身、理念や姿勢。この4つの視点で材料を揃え、飾らない言葉で発信し続ける。その積み重ねは、大勢に広く知られることを目指すものではありません。少数であっても、自社の価値観に合う人に深く選ばれる会社になるための、地道だけれど確かな一歩です。一緒に、その一歩を踏み出していきましょう!
よくある質問
Q. 給与や待遇で大手に勝てません。それでも採用できますか?
A. 給与だけを比べると不利になりやすいのは事実です。ですが、それがすべてではありません。働き方の実際や仕事の中身、理念といった「事実として語れる材料」を、丁寧に発信することです。それによって、待遇以外の理由で選んでもらえる可能性が十分にあります。最低限の待遇を整えたうえで、比べるモノサシを増やす発想が有効です。
Q. 採用ブランディングとは何ですか。何から始めればいいですか?
A. 採用ブランディングとは、自社の働き方や理念を一貫した言葉で発信する取り組みです。応募者に「この会社で働くイメージ」を持ってもらうことが目的です。最初の一歩は、大がかりな制作物を用意することではありません。社内にすでにある事実(制度・働き方・仕事内容)を書き出すことから始めるのが現実的です。
Q. 社内に発信できる人材がいません。どうすればいいですか?
A. 最初から整った文章を目指す必要はありません。経営者や現場担当者が、日々の出来事や感じたことを短くメモすることから始めましょう。そこから少しずつ、記事やSNS投稿の形に整えていく進め方が現実的です。外部の制作パートナーに翻訳を依頼する方法もあります。
Q. ホワイト企業認定などの認定は、取得する意味がありますか?
A. 認定は、自社の主張だけでは伝わりにくい「働きやすさ」を、第三者の基準で裏付ける材料になります。ただし、取得して終わりにしてはいけません。認定の中身をどう運用しているかまで発信して初めて、採用の材料として効果を発揮します。
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- 『子どものお迎えがあるので』と、堂々と言える会社へ。|ラクフルの働き方 — 働き方の実際を語った事例
- 採用情報 — ラクフルの採用の考え方
参考情報・出典
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日公表・2026年4月調査。業種別データを含むが、都市部・地方の地域別比較データは含まれない)
公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社
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