越境ECの関税と通関|HSコード・インボイス・DDPとDDUの基礎

越境ECを始めようとすると、多くの方がまず「関税って結局、誰がいくら払うの?」という疑問にぶつかります。国内の通販にはない論点だからこそ、調べても情報が断片的で、不安が残ったままになりがちです。

とくに気になるのが、HSコードやインボイスといった専門用語、そしてDDPとDDUという貿易条件の違いです。曖昧にしたまま出荷すると、お客様に想定外の関税を負担させたり、荷物が受け取り拒否になったりする恐れがあります。

この記事では、税関やJETROなどの公的な一次情報にもとづき、初めての方にも分かる言葉で整理します。関税の基本原則から、HSコードの調べ方、インボイスの書き方、DDP・DDUの選び方、そして2025年以降に大きく動いた米国・EUの制度変化まで、順番に確認していきましょう。あなたの最初の一箱を、安心して送り出せるように。

この記事で分かること

  • 関税は誰が・いつ払うのか、という原則の考え方
  • HSコード(統計品目番号)とは何か、どう調べるか
  • インボイス(仕入書)に何を書けばよいか
  • DDPとDDUの違いと、それぞれのメリット・デメリット
  • 米国デミニミス制度の停止など、2025年以降の最新の制度変化

結論:関税は「かかるかどうか」ではなく「誰が・いつ・いくら払うか」を設計するもの

先に結論をお伝えします。越境ECにおける関税の論点は、「関税がかかるかどうか」を心配することではありません。「誰が、いつ、いくら払うのかを、出荷前に決めておくこと」です。

関税は輸入国の制度に従って必ず発生しうるものであり、避けることはできません。避けられるのは、関税の存在を知らせないまま出荷してしまうことによる、お客様とのトラブルです。DDP・DDUという貿易条件を正しく選び、HSコードとインボイスを正確に整えておけば、受取拒否や思わぬクレームの大半は防げます。

そもそも関税とは何か|払うのは原則「輸入者」

関税とは、商品が国境を越えて輸入されるときに、輸入国側の政府が徴収する税金です。国によって税率も課税の基準も異なり、同じ商品でも送り先の国が変われば関税額は変わります。

税関の解説によると、関税の納税義務者は原則として「貨物を輸入する者」です。根拠となるのは関税法第6条で、輸入取引によって輸入される貨物の場合、通常は仕入書(インボイス)等に記載された荷受人が「貨物を輸入する者」にあたります。つまり越境ECでも、仕向国で課される輸入関税は、原則として輸入国側の受取人(お客様)が納めるということです。

ただし、これはあくまで原則です。次に説明するDDPという貿易条件を選べば、売主である私たち事業者側が関税をまとめて負担することもできます。「誰が払うか」は固定ではなく、事業者が選べる設計事項です。

HSコード(統計品目番号)とは|関税額を決める「商品の世界共通の名札」

関税額は、商品の種類ごとに定められた税率をもとに計算されます。その「商品の種類」を世界共通のルールで表すコードが、HSコード(Harmonized System。関税協力理事会が定めた商品の名称・分類に関する統一システム)です。

財務省貿易統計(税関)によると、日本の輸出入申告で使う統計品目番号は9桁で構成されます。そのうち先頭6桁が、「HS条約(商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約)」にもとづく国際共通のHSコードです。残りの3桁は、日本独自に細分化した番号です。つまり最初の6桁までは、世界中どこの税関でも同じ商品分類として通じるということです。

HSコードの調べ方

HSコードは商品ごとに一つ調べておく必要があります。実務では、税関が公開している「輸出統計品目表」や「実行関税率表」で商品名から検索する方法が基本です。似た商品でも素材や用途によって分類が変わることがあるため、迷う場合は税関の相談窓口(事前教示制度)に問い合わせて確認するのが確実です。分類を誤れば、関税額の計算も申告も誤ってしまいます。

私たち自身、この分類の難しさを経験しています。製品開発(OEM)事業のTABI Sneakersでは、Kickstarterで800足以上のご支援をいただきました。海外の支援者も多く、発送準備の中で、同じ「スニーカー」でも甲の素材が合成皮革か本革かでHSコードの号(細分類)が変わりうることに直面しました。一点ごとに素材の異なる中古品を扱う私たちには、馴染みのある感覚です。迷ったときこそ自己判断せず、事前教示制度を早めに使う。それが一番早い道です。

インボイス(仕入書)の書き方|通関の「パスポート」

インボイスとは、荷物の中身・数量・価格などを記した書類で、輸出入どちらの通関でも中心的な役割を果たします。税関の解説によれば、日本からの輸出通関では品名・数量・価格等を記載した輸出申告書を税関長に提出して輸出申告を行います(関税法第67条)。そのうえで、税関が必要と認める場合には、仕入書(インボイス)またはこれに代わる書類の提出が求められます(関税法第68条)。相手国側の輸入通関でも、インボイスの記載内容をもとに関税額が計算されるため、荷物の「パスポート」のような存在です。

実務でインボイスに記載する主な項目は、差出人・受取人の氏名住所、品名、数量、単価と合計金額、原産国、そして先ほどのHSコードです。品名は「雑貨」のような曖昧な表現ではなく、税関が商品を特定できる具体的な名称で書く必要があります。価格を実際より低く書く「アンダーバリュー」は、相手国での摘発リスクがあるだけでなく、荷物の補償額にも影響するため避けるべきです。

書類 役割 根拠・備考
インボイス(仕入書) 品名・数量・価格を証明し、関税額算定の基礎になる 関税法第68条にもとづき税関が提出を求める場合がある
輸出申告書 税関長への輸出の申告そのもの 関税法第67条
他法令の許可・承認書 ワシントン条約対象品など、関税以外の法令で規制される貨物の証明 関税法第70条

DDPとDDUの違い|「誰が関税を払うか」を選ぶ貿易条件

関税を誰が払うかを事前に決める仕組みが、DDPとDDUという貿易条件(インコタームズ。国際商業会議所が定める貿易条件の国際標準ルール)です。

JETROの解説によると、DDP(関税込持込渡し)の場合は例外的に売主(輸出者)が負担者になります。「DDP条件では、売主(輸出者の日本企業)が、出荷から輸入国の指定場所への配送、輸出入通関、関税および輸入VAT支払いのすべてを行います」とされています。一方、DDU(関税抜き持込渡し)は、インコタームズ2000時代に使われていた呼び方です。現行の規則ではDAPという条件が近いとされますが、この呼び替え自体の一次資料は確認できていません(実務では今もDDUの表記が広く使われています)。DDUでは、輸入通関や関税は買主(輸入者)側の負担になります。

DDP(関税込) DDU/DAP(関税抜き)
関税を払う人 売主(事業者側) 買主(お客様側)
お客様の体験 購入時の総額がそのまま最終額。追加請求なし 受け取り時に追加の関税・手数料を請求される
事業者側の負担 関税額の見積もり・立替が必要 価格設計はシンプル
向いているケース 受取拒否やクレームを避けたい、越境ECに慣れていないお客様が多い場合 もともと関税に慣れた層向け、越境専門モール経由など

海外マーケットプレイス側がDDP対応を必須化する動きも出ています。イーベイ・ジャパンの「2025年間 越境ECレポート」(2026年3月公表)によると、同社は米国向け取引でDDPを必須化し、購入時点の総額を明確にしました。関税トラブルを防ぐ流れは、業界全体で強まっています。

2025年以降の制度変化|デミニミス(少額免税)の縮小に注意

関税・通関の分野は、2025年から2026年にかけて特に米国を中心に大きく動きました。これから出荷を考える事業者ほど、最新の状況を押さえておく必要があります。

米国では、800米ドル以下の輸入貨物を関税免除としてきた「デミニミス」制度が、原産国を問わず全世界向けに停止されました。根拠は大統領令(Executive Order 14324、2025年7月30日署名)で、発効は2025年8月29日です。さらに2025年7月4日成立の税制歳出法により、デミニミス免税の法的根拠自体が2027年7月1日付で恒久的に廃止されることも決まっています。2026年2月20日付の大統領令(EO14388)により、この停止措置は2026年7月時点でも継続中です。

日本郵便も、この制度変化を受けて対応を変更してきました。2025年8月27日から一時停止していた内容品価格100米ドル超の米国宛て郵便物の引受を、2026年4月14日以降、指定局で再開しています。ただし100米ドル超から800米ドル以下の郵便物は、米国税関認証の事業者アプリを通じて、差出人が関税等を事前に支払う仕組みに変わりました。

EUでも、2021年7月1日施行のVATルールで22ユーロ以下の輸入品の免税が廃止されました。続いて2026年7月1日からは、150ユーロ以下の小包にも品目分類ごと3ユーロの簡易関税が始まっています(2028年7月1日までの経過措置)。対象はIOSS(輸入ワンストップショップ。EU向け少額商品のVAT申告・納付を簡素化する制度)登録済みの非EU販売者が扱う輸入品です。「少額だから関税はかからない」という前提は、通用しにくくなっています。

この影響は、実務データにも表れています。JETROが2026年3月に公表した調査によると、米国向けにECで販売している日本企業の約半数が、デミニミス撤廃の影響があると回答しました。売上の減少、通関・物流コストの増加、商品価格の見直しは、それぞれ約4割にのぼりました。制度を知らないまま出荷を続けることは、事業として無視できないリスクです。

受取拒否・トラブルを防ぐ、出荷前チェックリスト

初めての出荷前に確認したいポイントを整理します。

  • 送り先の国の関税制度・デミニミス基準を最新の情報で確認したか
  • 商品ごとのHSコードを正しく調べているか(迷う場合は税関に事前相談したか)
  • インボイスに品名・数量・価格・原産国を具体的かつ正確に記載しているか
  • DDP・DDUのどちらを採用するか、商品単価や顧客層に合わせて決めているか
  • 関税負担の考え方を、商品ページや購入前の案内でお客様に伝えているか
  • ワシントン条約対象品や食品・化粧品など、関税以外の規制対象でないか確認したか

この6点のうち、見落とされやすいのが最後の「お客様への事前案内」です。DDUを選ぶ場合、関税が購入価格に含まれていないことを購入前に伝えておく。この一手間で、受取時のトラブルはかなり減らせます。

ラクフルの接点と今後の展望:これから越境ECに挑む私たちが、同じ目線で調べたこと

私たちラクフルは、大阪・豊中でリユース・アパレルなど複数のEC事業を運営しながら、越境ECの本格化を計画しています。関税や通関は、まさに今、私たち自身が出荷前に整理している論点そのものです。だからこそ、この記事は「すでに完璧にできている会社」からの解説ではありません。これから挑む立場として、税関やJETROの一次情報を一つずつ確認しながらまとめた内容です。難しい制度を、難しいまま伝えないこと。噛み砕いて届けることも、私たちが仲間と積み重ねてきたEC運営の力の一つです。この先の挑戦も、わくわくしながら進めていきます。

関税・通関のルールは、今後も変わり続けます。「一度調べたから安心」ではなく、出荷のたびに最新情報を確認する姿勢が必要になります。私たちも、こうした制度変化を継続的に追いかけながら準備を進めていきます。海外配送の実務や販売チャネルの選び方については、今後の記事で詳しく解説していく予定です。同じように越境ECの一歩目で迷っている方は、お問い合わせから気軽に声をかけてください。

まとめ:関税は「事前設計」で怖くなくなる

関税は、越境ECを始める前に立ちはだかる壁のように見えます。しかし実際には、負担する人・タイミング・金額という3つの変数さえ押さえてしまえば、出荷前に設計できるものです。

HSコードで商品を正しく分類し、インボイスに事実を正確に書き、DDPかDDUかを商品や顧客層に合わせて選ぶ。そして2025年以降続いている制度変化を定期的に確認する。この積み重ねが、お客様の信頼と、事業としての越境ECの土台になります。一歩目を越えれば、新しい景色が待っています。

よくある質問

Q. 関税は必ずかかりますか?

A. 送り先の国の制度によります。多くの国には少額の輸入貨物を免税とする基準(デミニミス)がありますが、米国は2025年8月にこの基準を停止し、EUも2026年7月から150ユーロ以下の小包に簡易関税を課す制度を始めています。「少額なら関税はかからない」という前提は、以前より通用しにくくなっています。

Q. DDPとDDU、越境EC初心者はどちらを選ぶべきですか?

A. 一概には言えませんが、受取拒否やクレームを避けたい場合はDDP(関税込み)が安心です。ただし関税額の見積もりや立替の手間が増えるため、商品単価や配送量に応じて判断するのが現実的です。DDUを選ぶ場合は、関税が別途かかることを購入前にきちんとお客様へ伝えることが欠かせません。

Q. HSコードはどこで調べればよいですか?

A. 税関が公開している輸出統計品目表や実行関税率表で、商品名から検索するのが基本です。分類に迷う場合は、税関の事前教示制度(相談窓口)に問い合わせて確認する方法が確実です。

Q. インボイスで特に気をつけるべき点は何ですか?

A. 品名を具体的に書くこと、価格を実際より低く書かないことです。曖昧な品名や実勢価格を下回る記載は、相手国側の通関で止まる原因になったり、荷物の補償額に影響したりします。

Q. 輸出する側で消費税はどうなりますか?

A. 日本からの輸出は、消費税法第7条にもとづく輸出免税の対象です。ただし適用には、輸出許可書や税関長の証明書などを取引ごとに保存する必要があります(保存期間7年)。

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公開: 2026年7月13日 / 最終更新: 2026年7月13日 / 執筆: ラクフル株式会社

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