「効率化はAIに、心は人に。」——これは、大阪・豊中のラクフル株式会社が、これからのEC運営で大切にしていきたい一本の線引きです。AI・自動化・データ活用は、私たちの仕事をどう変えるのか。人の仕事は、奪われてしまうのか。テクノロジーに関心を寄せる採用候補のみなさま、DX(デジタルによる事業の作り替え)を考える取引先のみなさま、そして日々わたしたちと机を並べる仲間へ。ラクフルの「技術観」と「人間観」を、飾らない等身大の言葉でお伝えします。結論はシンプルです。任せられることは、どんどん任せる。でも、お客様の気持ちに寄り添う心だけは、人が守り続ける。この一線を、わたしたちは絶対に譲りません。
EC運営のどこにAI・自動化が効くのかを、やさしく整理する
まず、むずかしい話を、うんとやさしくします。「AIをECに活用する」と聞くと、なんだか大きくて、遠い世界の話に聞こえるかもしれません。でも、わたしたちが考えているのは、もっと足元の、地に足のついたことです。
ネットショップの運営は、じつは細かな作業の積み重ねでできています。商品の情報を登録する。写真を並べる。価格を市場に合わせて見直す。在庫を数える。お問い合わせに返信する。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピング、Qoo10といった複数のモールに同じ商品を出すたびに、この地道な手作業は、モールの数だけ増えていきます。ラクフルはリユース商材(本・CD・DVD・ゲーム・おもちゃ・家電など)やアパレルを扱っていますが、二つとない一点ものも多く、扱う点数が増えるほど、手間は雪だるまのようにふくらんでいきます。
こうした「くり返しが多く、ルールがはっきりしている作業」こそ、AIや自動化がいちばん力を発揮する場所です。逆に、「相手の気持ちをくみ取る」「はじめての事態に、どう向き合うかを決める」といった、正解のない仕事は、人が担うべき場所。この見極めが、すべての出発点になります。道具を手にする前に、まず「どこに使うか」を決める。順番を、まちがえない。
下の表は、わたしたちが今、どの仕事をどちらに寄せていこうと考えているかの整理です。「もう出来上がった実績」ではなく、「こう線を引いていきたい」という設計図として読んでください。
『AIに任せる仕事』と『人が守る仕事』の役割分担マトリクス
| 仕事の性質 | くり返しが多い/ルールが明確 | 一点もの/正解がない・心が要る |
|---|---|---|
| AI・自動化に任せていきたい | 商品データの登録補助、価格の市場比較、在庫のチェック、定型的な問い合わせの下書き、モール横断の作業整理 | — |
| 人が守り続けたい | — | お客様の気持ちへの寄り添い、クレームの本質理解、はじめての商材の目利き、ブランドとしての言葉選び、仲間との対話 |
大切なのは、左上(AIに任せる)と右下(人が守る)を、意図をもってはっきり分けることです。境界をあいまいにしたまま「なんとなく便利だから」とAIに任せていくと、いちばん人が向き合うべき「心」の部分まで、知らないうちに手放してしまいかねません。だからこそ、わたしたちは線引きを、指でなぞるように、ていねいに考えます。
効率化は、人の仕事を奪うためではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
AIや自動化を進めると聞くと、「じゃあ、人はいらなくなるの?」という不安が、ふっとよぎるかもしれません。とくにラクフルには、子育てをしながら働く仲間や、パート・アルバイトを含めて33名の、背景も持ち味も異なるメンバーがいます。一人ひとりの働く場所を、テクノロジーで奪うようなことは、絶対にしたくない。それが、わたしたちのいつわらざる本音です。
効率化の目的は、人を減らすことではありません。人が、人にしかできない仕事に集中できるようにすることです。単純作業に追われて残業がふくらみ、心の余裕まで失ってしまっては、本末転倒。ラクフルはホワイト企業認定をいただいた会社として、「子どものお迎えがあるので」と、うしろめたさなく堂々と言える働き方を大切にしています。AIに退屈な作業を引き受けてもらうことは、その働き方を守る、頼もしい味方にもなるはずです。効率化とは、人を追い立てるムチではなく、人にゆとりを返すための道具なのです。
空いた時間で、人はもっと人にしかできないことをする
では、生まれた時間で、いったい何をするのか。じつは、ここにこそ、ラクフルの価値の源泉があります。
たとえば、価格の比較や在庫チェックにかけていた時間が減れば、その分、お客様からの一通の問い合わせに、もっと心を込めて返せます。商品の写真をただ機械的に並べるのではなく、「この一冊が、どこかの誰かの少し明るい明日につながるように」と、言葉を選んで紹介できます。撮影スタジオやレンタル会議室に足を運んでくださる地域のお客様と、もっと顔を合わせて話せます。とよなかマルシェのように、コロナ禍で打撃を受けた地元のお店に寄り添う——そんな、数字にはすぐ表れないけれど確かに大切な仕事に、時間を再投資できるのです。効率化がつくるのは、空白の時間ではありません。人にしか生めない価値を、育てるための時間です。
効率化で生まれた時間を、人の価値に再投資するサイクル
①AI・自動化が定型作業を引き受ける
↓
②人の手と時間に、ゆとりが生まれる
↓
③そのゆとりを「心の仕事」へ再投資する
(寄り添い・目利き・言葉選び・地域とのつながり)
↓
④お客様の満足と、仲間の働きがいが高まる
↓
⑤よい関係が、次の挑戦の余力を生む
↓
(①へ戻り、循環していく)
このサイクルがいったん回りはじめると、効率化は「冷たい合理化」ではなく、「人の温度を守るための投資」へと姿を変えます。わたしたちが本気で目指しているのは、この循環です。
外の知見に学ぶ——道具は、人を助けるためにある
自分たちだけの思いつきで突き進むのは、あぶない。だから、世の中で長く積み重ねられてきた知見にも、しっかり学びます。
デザインの世界には「人間中心設計(Human-Centered Design)」という考え方があります。むずかしく言えば、道具や仕組みをつくるとき、技術の都合ではなく、それを使う人の都合から出発しよう、という発想です。使いやすさを研究してきた専門家たちは、「よい道具は、人に無理を強いない。人のやりたいことを、そっと後押しする」と言い続けてきました。ハンマーが釘を打つ人の腕力を助けるように、テクノロジーもまた、人を主役にするための脇役であるべきだ——そういう考え方です。
この発想は、そのままAI活用にもあてはまります。AIを「主役」にして人がそれに合わせて働くのではなく、あくまで人が主役で、AIはその働きを助ける脇役。この順番をまちがえないことが、何よりも大切だと考えています。主役と脇役が入れ替わった瞬間、会社は人のためではなく、道具のために動きはじめてしまうからです。
人間中心設計の発想を、EC運営とチームに当てはめる
この考え方を、ラクフルの現場の言葉に翻訳すると、こうなります。
お客様に対しては——AIが商品説明の下書きをつくったとしても、最後に「この言葉で、受け取る人の心はあたたかくなるだろうか」と確かめるのは、人。データ分析(データ分析 EC)で「よく売れている」と分かっても、その数字の向こうにいるお客様の気持ちを想像するのは、人。数字は、人の気持ちに近づくための入り口であって、決してゴールではありません。
そして、仲間に対しても、まったく同じです。新しいツールを導入するときは、「これは現場のみんなを助けるのか、それとも縛るのか」を必ず問います。人間中心設計とは、お客様だけでなく、いっしょに働く仲間もまた「人」として真ん中に置く、ということ。ES(従業員満足)を一番に考えるラクフルにとって、これは技術選びの、譲れない物差しです。
ラクフルとしての仮説——AIと人の役割を、意図をもって線引きする
ここまでの知見をふまえ、ラクフルがこれから検証し、実践していきたい仮説を、率直に言葉にします。
わたしたちの仮説は、こうです。「AIと人の境界を、あいまいにせず、意図をもって引いた会社ほど、お客様にも仲間にも、長く信頼される」。
世の中には、「とにかくAIで、なにもかも効率化してしまえ」という流れもあります。でも、わたしたちはそこで、あえて一歩、立ち止まりたい。効率だけをひたすら追えば、たしかに短期的にはコストは下がるかもしれません。けれど、お客様一人ひとりの「困った」「うれしい」に向き合う心まで自動化してしまえば、会社から少しずつ体温が消えていきます。体温のない会社を、人は長く好きでいてくれるでしょうか。
だからこそ、ここに、わたしたちが何度でも立ち返る一文を置きます。
AIに任せられることは、どんどん任せます。でも、お客様の気持ちに寄り添う『心』だけは、私たち人間が守り続けます。
これは、口あたりのいいきれいごとではありません。日々の一通の返信、一枚の商品写真、一度きりのクレーム対応。その一つひとつに、この線引きを効かせていく——それが、AI時代にラクフルが選ぶ道です。効率化は、とことん進める。でも、心は、決して手放さない。この一見むずかしい両立を、これから一つずつ、現場で検証していきます。
今後ラクフルが実践していくこと
ここに挙げるのは、確立ずみの実績ではなく、これから一つずつ積み上げていく「打ち手」です。等身大に、正直に並べます。
- 定型作業からの自動化・AI活用を、段階的に広げる:商品データ登録の補助、価格の市場比較、在庫チェック、問い合わせ下書きなど、ルールがはっきりした仕事から順に、AI・自動化を取り入れていくことを目指します。いきなり全部ではなく、現場が「これは助かる」と実感できる順に、一歩ずつ。
- データ活用(データ分析 EC)を高度化し、それを「人の判断」に返す:数字を集めて終わりにせず、「このお客様は、何に喜んでくださったのか」を読み解くための材料として活かします。判断の主役は、あくまで人です。
- AIと人の役割分担を、社内で見える化する:どこまでを任せ、どこからを人が守るのか。その線引きを言葉と図にして、仲間全員で共有し、迷ったときにいつでも立ち返れるようにしていきます。
- 効率化で生まれた時間を、心の仕事へ再投資する:空いた時間を、新たなノルマで埋めるのではありません。お客様への寄り添いや、地域とのつながり、そして仲間の学びの時間に充てていきます。
- 越境ECや複数モール展開の運営を、テクノロジーで支える:楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Qoo10などでの展開を深めるほど、作業は増えていきます。その土台を自動化で下支えし、人が判断と創造に集中できる体制づくりを進めていきます。
どれも、一足飛びにはいきません。試行錯誤しながら、現場の声に耳をすませながら、一歩ずつ。それが、ラクフルらしいやり方だと信じています。
まとめ:テクノロジーの先に、いつも人がいる
AIも、自動化も、データも、それ自体が目的ではありません。その先には、いつも人がいます。商品を受け取って、ふと笑顔になるお客様。夕方に、子どものお迎えへ急ぐ仲間。地域で歯を食いしばって踏ん張る、お店の店主さん。テクノロジーは、その人たちの暮らしを、ほんの少しだけ明るくするための道具にすぎません。
わたしたちラクフルのミッションは、「インターネットを通じて、人々の生活に彩りと艶と輝きをもたらす」こと。AIは、その彩りをより多くの人へ届けるための、頼もしい味方です。でも、彩りに込める気持ちそのものは、人にしかつくれません。効率は、とことん。心は、どこまでも人の手で。大阪・豊中から、楽しさとわくわくを未来へ届けるために、わたしたちはこの両立に、これからも挑み続けます。
▶ テクノロジーと人を両立する働き方に興味がある方は、採用ページへ。ラクフルがこれから目指す未来像はミッション・ビジョンのページで、AIと人の判断軸をさらに深掘りした「AIに任せる仕事、人が守る仕事|これからのEC企業に必要な判断軸」も、あわせてどうぞ。